訪問看護で利用者や家族の言動に困ったときは、職員の安全を先に確保し、必要なケアをどう続けるかを関係者で考えます。「カスハラ」とすぐに決めたり、担当者だけに対応を任せたりすると、状況を見誤るおそれがあります。この記事では、ケアマネジャーと事業所管理者が使える4段階の調整手順を整理します。認知症などの症状が関係する場合の見方と、介護保険サービスの継続が難しい場合の引き継ぎも説明します。
訪問看護のカスハラ対応は「安全」と「ケア」を同時に考える
職員からの相談を個人の問題にしない
職員の「次の訪問が怖い」という相談は、事業所として受け止めます。厚生労働省の介護現場におけるハラスメント対策マニュアルは、管理者や地域の関係者との連携を重視しています。管理者が職員の状態を確認し、ケアマネジャーに次回訪問を相談します。「少し我慢して」では対応方針になりません。
介護保険と医療保険の制度を混同しない
訪問看護には介護保険と医療保険があります。この記事の契約終了や引き継ぎの基準は、主に介護保険の指定訪問看護を対象とします。医療保険では適用制度と契約書を別に確認します。
2026年9月21日時点、事業主のカスタマーハラスメント防止措置は、厚生労働省の施行案内によると2026年10月1日から義務化されます。制度の詳細は施行時点の情報も確認してください。事業所内の安全ルールについては、既存記事の訪問看護とカスハラ|事業所の備えで紹介しています。ここでは発生後の多職種連携に絞ります。
第1段階|カスハラかを急がず事実と背景を整理する
出来事と評価を分けて記録する
最初に、言動の内容、場所、時刻、同席者、職員への影響を分けて記録します。「威圧的だった」という評価だけでは、関係者が同じ場面を想像しにくいためです。録音などの扱いは、事業所の方針と個人情報の取り扱いを確認します。
| 記録する項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 言動 | 「訪問を終えると告げた後、退出を止める発言があった」 |
| 前後の状況 | 「説明したサービス内容に不満を示した後だった」 |
| 職員への影響 | 「職員は次回の単独訪問に不安を訴えている」 |
| 直後の対応 | 「管理者へ連絡し、次回訪問の方法を検討中」 |
これは架空の記録例です。「家族が怒鳴った」という情報だけなら、理由も確認します。正当な苦情はカスハラではありません。厚生労働省の義務化リーフレットにも、その区別が示されています。
認知症などの症状とケアの課題を見分ける
認知症などの病気や障害の症状として表れた言動を、一律にカスハラと扱いません。厚生労働省のマニュアル概要は、症状としての言動には医療的なケアからの検討が必要としています。一方、症状による暴言や暴力であっても、職員の安全確保は必要です。
例えば「物を取られた」と繰り返す場合、決めつけずに生活状況や心身の変化を確認します。診断や治療の判断は記事から行えません。主治医・かかりつけ医に相談し、ケアマネジャーと訪問看護事業所で訪問方法を調整します。ここまでの場面は架空例です。
第2段階|次回の訪問前に職員の安全策を決める
緊急時はその場の安全を優先する
身体的な危険が差し迫る場面では、訪問中の職員がその場を離れて安全を確保し、必要に応じて緊急通報します。管理者はその後の連絡とケアの調整を引き受けます。次回の訪問をどうするかは、職員一人に決めさせません。厚生労働省の医療現場及び訪問看護における暴力・ハラスメント対策は、訪問看護師向けの防犯機器について案内しています。
訪問方法と連絡方法を具体化する
安全策は次の訪問までに決めます。同行者や家族の同席時間を、必要なケアと照らして検討します。複数名訪問では算定要件や本人の負担も確認します。
| 順番 | 決めること | 主に確認する相手 |
|---|---|---|
| 1 | 次回までの安全な連絡方法 | 管理者・訪問職員 |
| 2 | 訪問の人数、時間、同席者 | 管理者・利用者・家族 |
| 3 | 看護が中断した場合の代替連絡 | 主治医・ケアマネジャー |
| 4 | いつ対策を見直すか | 関係者全員 |
「次回は訪問前に管理者がご家族へ連絡し、説明内容を確認する」という方法も考えられます。これは会話例であり、あおい訪問看護ステーションの実際の運用を示すものではありません。
第3段階|ケアマネ・主治医・管理者で調整する
共有する情報を必要な範囲に絞る
介護保険の指定訪問看護では、指定居宅サービス等の運営基準が主治医や居宅介護支援事業者との連携を定めています。ケアマネジャーは訪問看護だけに判断を任せず、必要に応じてサービス担当者会議を調整します。共有するのは、次の支援に必要な事実と対策です。厚生労働省のハラスメント対策マニュアルも、地域の関係者との共有時には個人情報の第三者提供の可否を確認するよう求めています。
- どの訪問で、何が起きたか
- 利用者の病状や生活上の変化について確認できたこと
- 職員と利用者双方に必要な安全策
- 訪問看護が担うケアと、他サービスに相談する課題
- 方針を見直す時期と連絡先
利用者・家族への説明を一つの方針にする
関係者の説明が食い違わないよう、事業所が事実と提案をまとめます。ケアマネジャーと主治医に必要な部分を相談し、説明の担当を決めます。例えば「看護は継続したいので、説明は管理者へ集めます」と伝えます。介護負担や症状の変化があれば、支援の組み直しも考えます。この会話例は架空です。
第4段階|継続が難しいときは引き継ぎを組み立てる
介護保険では解除を即断しない
介護保険の指定訪問看護で継続が困難になっても、言動があれば直ちに契約解除できるとは考えません。厚生労働省の介護現場におけるハラスメント対策は、ハラスメントが常にサービス提供を拒む「正当な理由」になるわけではないと説明しています。個別の重大性、再発可能性、ほかの防止策、利用者の不利益を確認します。厚生労働省の同マニュアルは、解除の予告や後任の紹介を含む例を示しています。医療保険に、この介護保険の基準をそのまま当てはめません。
次の支援につながる情報を渡す
介護保険の指定訪問看護について、運営基準第64条第2項は、提供終了時に利用者または家族への適切な指導を行い、主治医と居宅介護支援事業者への情報提供、保健医療サービスまたは福祉サービスを提供する者との密接な連携に努めることを定めています。指定居宅サービス等の運営基準を踏まえ、終了日だけでなく、次の支援へつなぐ段取りを考えます。
引き継ぎでは、看護に必要な情報、安全策、連絡先を整理します。共有には本人の同意や法令上の扱いを確認します。人物像を決めつけず、事実と対応策を分けて伝えます。事業所が見つからない場合は、主治医・担当ケアマネジャーと必要なケアをどうつなぐか相談してください。
訪問看護のカスハラ対応でよくある質問
家族の苦情はすべてカスハラですか?
いいえ。正当な苦情や改善の申入れをしただけでは、カスハラとは限りません。言動の内容と伝え方、職員への影響を具体的に確認します。
認知症の方の暴言はどう扱いますか?
症状として表れた言動を一律にカスハラと決めません。主治医と状況を確認し、ケアの調整と職員の安全確保を同時に考えます。
ケアマネジャーだけで調整すべきですか?
いいえ。事業所管理者、主治医、必要な関係者で事実と方針を共有します。個人情報は共有の必要性と取り扱いを確認します。
契約を終えるときは何を確認しますか?
介護保険の指定訪問看護では、正当な理由の検討に加え、主治医・居宅介護支援事業者への連絡と、必要な引き継ぎを確認します。医療保険は別に契約と適用制度を確認します。
参考リンク(公式ページ、2026年9月21日確認)
- 介護現場におけるハラスメント対策
- 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル
- 指定居宅サービス等の運営基準
- カスタマーハラスメント防止措置の施行案内
- ハラスメント対策マニュアルの概要
- 訪問看護における暴力・ハラスメント対策
訪問看護の継続や調整でお困りの場合は、あおい訪問看護ステーション(050-5536-3136)へご相談ください。対応可能な範囲を確認します。

