「診断はついたけれど、これから何をすればいいのかわからない」
「毎日の癇癪(かんしゃく)に、親のほうが限界かもしれない」
「療育には通っているけれど、家での過ごし方を相談できる人がいない」
自閉スペクトラム症(ASD、いわゆる自閉症)やADHDのお子さんを育てるご家族から、私たちがよくお聞きする声です。
発達支援というと「療育に通う」ことが真っ先に思い浮かびますが、訪問看護という選択肢もあります。療育が「通って学ぶ場」だとすれば、訪問看護はご自宅での暮らしそのものを一緒に整えていく支援です(両者の違いは「療育と訪問看護の違い」で詳しく解説しています)。
この記事では、発達障害のあるお子さんに訪問看護が使えるのか、実際にどんなことができるのか、費用はどうなるのかを整理します。
※2026年8月時点の情報です。制度の詳細は主治医・自治体の窓口でご確認ください。
そもそも発達障害とは
発達障害は、生まれつきの脳の特性によって、物事の受け取り方や行動のパターンに偏りがあるものの総称です。代表的なものに次のようなものがあります。
- 自閉スペクトラム症(ASD):対人関係やコミュニケーションの取り方に特徴があり、こだわりの強さや、音・光・触感などへの感覚の過敏さ(または鈍感さ)を伴うことがあります
- 注意欠如・多動症(ADHD):注意が持続しにくい、じっとしていることが苦手、思いついたらすぐ行動する、といった特徴があります
- 限局性学習症(SLD/学習障害):全体の知的発達に遅れはないものの、読む・書く・計算するなど特定の分野に困難があります
これらは重なって現れることも多く、はっきり線を引けるものではありません。
大切なのは、特性そのものを「なくす」のではなく、その子に合った環境を整えることで、暮らしやすさが大きく変わるという点です。「困った子」ではなく「困っている子」として見る——それが支援の出発点だと私たちは考えています。
発達障害でも訪問看護は使えるのか
使えるケースがあります。 ただし、誰でも自動的に使えるわけではありません。
訪問看護の利用には、主治医が交付する「訪問看護指示書」が必要です。発達障害のあるお子さんの場合、児童精神科・小児神経科・小児科などの主治医が「訪問看護による支援が必要」と判断した場合に、指示書を交付してもらえます。指示書の種類や訪問の枠組みは、お子さんの状態と主治医の判断によって変わりますので、個別のケースについては主治医または当ステーションにご相談ください。
「うちの子は対象になるのだろうか」という段階のご相談も歓迎です。主治医への確認の仕方から、一緒に整理できます。
訪問看護でできること
お子さんの状態と主治医の指示に応じて、次のような支援を行います。
生活リズムと睡眠の支援
発達障害のあるお子さんは、寝つきの悪さや途中で目が覚めてしまう睡眠の困りごとを抱えることが少なくありません。睡眠が崩れると、日中の情緒や集中にも影響します。
起床・就寝の時間、寝る前の過ごし方、光や音の環境などを、ご家庭の事情に合わせて一緒に調整していきます。睡眠の困りごとについては「発達障害のお子さんの睡眠の悩み」でも詳しく取り上げています。
感覚過敏への環境調整
「服のタグが痛い」「掃除機の音がつらい」「給食の匂いで食べられない」——本人にとっては切実な困りごとですが、周囲からは伝わりにくいものです。
どんな刺激が苦手なのかを一緒に整理し、家の中でできる工夫(着心地のよい衣類、静かに過ごせる場所づくり、予告の出し方など)を提案します。詳しくは「子どもの感覚過敏への対応」を、食事の悩みは「偏食・食べないお子さんとの向き合い方」もご覧ください。
パニック・かんしゃくへの対応を一緒に考える
「なぜ急にスイッチが入るのかわからない」というご相談は非常に多いです。訪問看護では、きっかけ・状況・時間帯の記録を一緒に取りながら、パターンを見つけていきます。
起きてしまったときの対応だけでなく、起きにくくする手前の工夫に重心を置くのが基本です。
服薬の管理と副作用の観察
ADHDの治療薬など、処方を受けているお子さんの服薬状況を確認し、食欲や睡眠、情緒の変化といった副作用のサインを観察して主治医に報告します。「飲ませるのが毎回ひと苦労」という現実的な悩みも、一緒に工夫を考えます。
二次障害を防ぐ
発達障害そのものよりも深刻になりやすいのが、二次障害です。周囲に理解されない経験が積み重なると、不登校、不安、抑うつ、自己否定感につながることがあります(不登校については「不登校・朝起きられないお子さんへ」もご覧ください)。
早い段階から関わり、「うまくいっている部分」を一緒に見つけていくことが、二次障害の予防につながります。
園・学校との連携
ご家庭での様子と、園や学校での様子は違うことがよくあります。ご家族の同意のもとで、園・学校・療育機関と情報を共有し、同じ方針で関われるよう橋渡しをします。
就園・就学の準備については、関連記事「医療的ケア児の就園・就学」もあわせてご覧ください。
ご家族への支援
これがいちばん大きいかもしれません。
- お母さん・お父さんの話を聞く時間をつくる:誰にも言えなかったことを、そのまま話せる相手がいることには意味があります
- 対応の「答え合わせ」ができる:「この対応でよかったのか」を専門職と確認できる安心感
- きょうだい児への配慮:どうしても後回しになりがちなきょうだいへの関わりも、一緒に考えます(詳しくは「きょうだい児への支援」へ)
「親の関わり方が悪いのでは」と自分を責めてしまう方は少なくありません。そうではないということを、繰り返しお伝えしたいと思っています。
費用のしくみ
お子さんの訪問看護には、原則として医療保険(健康保険)が適用されます(介護保険は原則40歳以上のため対象外です)。
自己負担割合は未就学児で2割、就学後は3割が基本ですが、次の制度により実際の負担は軽くなることが多くあります。
- 自立支援医療(精神通院医療):精神疾患(発達障害を含む)で継続的な通院医療が必要な場合に、医療費の自己負担が原則1割に軽減される制度です。主治医の指示のもとで行われる精神科の訪問看護も対象に含まれる場合があります。対象になるかどうかや申請方法は、主治医またはお住まいの市の窓口にご確認ください
- 子ども医療費助成:お住まいの市の制度により、自己負担がさらに軽減される場合があります。訪問看護の利用料が助成対象に含まれるかどうかは市によって取り扱いが異なるため、お住まいの市の窓口にご確認ください
- 小児慢性特定疾病医療費助成:対象疾病に該当する場合に利用できる制度です。対象かどうかは主治医にご相談ください
「うちの場合はいくらになるのか」は、状況によって変わります。制度の確認からお手伝いしますので、遠慮なくお尋ねください。
利用までの流れ
- まず相談:保護者の方から直接でも、療育機関・相談支援専門員・主治医経由でも構いません
- 主治医に相談:訪問看護が使えるか、指示書を出してもらえるかを確認します(この確認も一緒に進められます)
- 訪問看護指示書の交付
- 初回訪問・計画の作成:ご家庭の困りごとを伺い、何から取り組むかを一緒に決めます
- 定期訪問の開始
あおい訪問看護ステーションの発達支援
当ステーションは小児専門チームを設け、発達障害のあるお子さんへの訪問に対応しています。看護師に加えて理学療法士・作業療法士が在籍しており、感覚や運動、日常生活の組み立ての面から多職種で関わることができます。
24時間365日の連絡体制を整えているため、「夜、どうしても落ち着かない」といった場面でも相談先があります。
あおい訪問看護ステーション
船橋市丸山3-1-2-202|TEL 050-5536-3136
24時間365日の連絡体制/土日祝も通常営業
対応エリア:船橋市・鎌ケ谷市・市川市・白井市
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診断がついたばかりの方も、「診断はまだだけれど気になっている」という方(「発達が気になる段階での相談先」もご覧ください)も、まずはお話をお聞かせください。

