「この子は、幼稚園や学校に通えるのだろうか」
在宅での生活が少しずつ落ち着いてくると、次に多くのご家族が向き合うのが、この問いです。たんの吸引や経管栄養が必要なお子さんの保護者から、私たちもよくご相談をいただきます。
結論から言えば、医療的ケアがあることを理由に、就園・就学をあきらめる必要はありません。2021年に施行された「医療的ケア児支援法」により、自治体や学校には、医療的ケア児が家族の付き添いなしで通えるようにするための支援体制づくりが求められるようになりました。
ただし、実際にどんな体制が整うかは、お住まいの自治体や園・学校によって差があるのが現状です。この記事では、いつ・どこに相談を始めればよいのか、学校では誰が医療的ケアを行うのか、そして訪問看護がどうお手伝いできるのかを整理します。
※2026年8月時点の情報です。制度の詳細と最新の運用は、お住まいの自治体の窓口でご確認ください。
医療的ケア児支援法で何が変わったか
2021年(令和3年)9月18日に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)」が施行されました。
この法律のポイントは、医療的ケア児への支援が、国・自治体や学校・保育所の設置者の「責務」として明記されたことです。学校や保育所の設置者には、在籍する医療的ケア児に対して適切な支援を行う責務があるとされています。
特に大切なのは、保護者の付き添いを前提としないという考え方がはっきり示された点です。学校の設置者は、医療的ケア児が「保護者の付添いがなくても適切な医療的ケアその他の支援を受けられるようにするため」、看護師等の配置その他の必要な措置を講ずるものとされています(同法第10条第2項)。保育所についても同様の規定があります(同法第9条第2項)。これまで「お母さんが付き添えるなら受け入れます」という運用が各地にありましたが、法の趣旨としては、付き添いがなくても通える体制づくりが目指されています。
とはいえ、法律ができれば自動的に体制が整うわけではありません。早めに相談を始めることが、実際にはいちばん効きます。
相談はいつから始めるか|目安は「1年前」
保育園・幼稚園(就園)
自治体の入園申込みの時期より前に、保育課・こども政策課などの窓口へ事前相談をしておくのが安全です。医療的ケア児の受け入れは、看護師の配置や園との調整が必要になるため、通常の申込みスケジュールでは間に合わないことがあります。
小学校(就学)
多くの自治体では、就学の前年に「就学相談」の受付が始まります。教育委員会の就学相談窓口が入口になり、面談や発達の確認、必要に応じて教育支援委員会での検討を経て、通う学校や支援の形(通常学級・特別支援学級・特別支援学校)を一緒に決めていきます。
船橋市では、総合教育センター(教育支援室)が就学相談の窓口になっています。市川市・鎌ケ谷市・白井市も、それぞれの教育委員会に相談窓口があります。受付時期や申込方法は市や年度によって異なるため、お住まいの市の教育委員会にご確認ください。
「まだ先のことだから」と待つよりも、年少・年中の段階で一度窓口に相談しておくほうが、選択肢が広がります。相談したからといって進路が決まってしまうわけではありません。
学校では、誰が医療的ケアを行うのか
学校で吸引や経管栄養を行う担い手は、主に次の2通りです。
① 学校に配置された看護師
自治体が学校に看護師を配置し、その看護師が医療的ケアを担当します。配置の形は自治体によって異なり、常勤・非常勤・巡回などさまざまです。
② 認定特定行為業務従事者である教職員
一定の研修(特定の者を対象とする研修)を修了し、都道府県から「認定特定行為業務従事者」の認定を受けた教職員は、たんの吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)に限って実施できる制度があります。実施にあたっては、医師の指示や保護者の同意など所定の手続きが必要です。
なお、医療保険の訪問看護は「居宅」でのサービスが原則のため、訪問看護師がそのまま学校に出向いてケアを行うことは、基本的にはできません。一方で、自治体が独自に園・学校への看護師配置・派遣の事業を行っている場合もあります。お住まいの市の状況は、教育委員会や保育担当課にご確認ください。
このあたりは制度が入り組んでいるため、「うちの子の場合はどうなるのか」を個別に確認するのが確実です。相談支援専門員や訪問看護ステーションが、窓口探しから一緒に動くことができます。
就園・就学に向けて、訪問看護ができること
私たちが日々の訪問の中でお手伝いできるのは、たとえば次のようなことです。
- 通園・通学を見据えた体調の整え方:日中の活動時間に合わせて、栄養や吸引のタイミング、生活リズムを一緒に調整していきます
- ケアの手順を「伝えられる形」にする:園や学校の看護師・教職員に引き継ぐことを想定し、日ごろのケア手順や注意点を整理してお渡しできる形にします
- 主治医との橋渡し:就学相談や園との面談で求められる医師の意見書・指示書について、主治医と連絡を取りながら準備を進めます
- 面談への同席のご相談:園・学校との話し合いに、ご家族だけで臨むのは負担が大きいものです。同席などの対応はケースによりますので、まずはご相談ください
- ご家族の不安の受け止め:「本当に預けて大丈夫だろうか」という気持ちごと、一緒に考えます
あおい訪問看護ステーションは、経管栄養や人工呼吸器の管理を含む医療依存度の高いお子さんの在宅支援に対応しており、小児専門チームと24時間365日の連絡体制を整えています。就園・就学という節目は、ケアの内容そのものが変わる時期でもあります。環境が変わる前後こそ、訪問看護を頼っていただきたい時期です。
まずはどこに相談すればいいか
迷ったときの相談先を、目的別に整理しました。
| 相談したいこと | 相談先 |
|---|---|
| 保育園・幼稚園に通わせたい | 市の保育担当課(保育課・こども政策課など) |
| 小学校の就学について | 市の教育委員会 就学相談窓口 |
| 使えるサービス全体の組み立て | 相談支援専門員(障害児相談支援事業所) |
| 医療的なケアの継続・体調管理 | 主治医、訪問看護ステーション |
| どこに相談していいかわからない | 千葉県医療的ケア児等支援センター「ぽらりす」(千葉リハビリテーションセンター内) |
「まだ何も決まっていない段階」でのご相談も歓迎です。むしろ、決まる前のほうがお役に立てることが多くあります。NICUからの退院を控えている段階の方は「NICU退院前に準備すること」、在宅生活の備えについては「医療的ケア児の災害・停電への備え」もあわせてご覧ください。
あおい訪問看護ステーション
船橋市丸山3-1-2-202|TEL 050-5536-3136
24時間365日の連絡体制/土日祝も通常営業
対応エリア:船橋市・鎌ケ谷市・市川市・白井市
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