2026年6月1日、令和8年度の診療報酬改定が施行されました。訪問看護について「点数がどう変わったか」はよく話題になりますが、ケアマネジャーや退院支援の担当者にとって実務が変わるのは、むしろ訪問の「時間」と「回数」の考え方のほうです。
そしてこの改定、いまひとつ大きな誤解が広まっています。「訪問看護は20分未満だと算定できなくなった」というものです。これは、正確ではありません。
この記事では、何がどう変わって、何は変わっていないのかを、厚生労働省の告示・通知の原文にあたって整理します。※2026年9月時点の情報です(2026年6月1日施行の令和8年度診療報酬改定を反映)。最新の制度は公式情報をご確認ください。
いちばん誤解されている点|「20分未満は算定できない」はどこまで本当か
結論から書きます。20分の下限が明記されているのは、訪問看護基本療養費(Ⅱ)(ハを除く)についてです。ご自宅で暮らす方への訪問で算定する訪問看護基本療養費(Ⅰ)に、20分の下限は設けられていません。

訪問看護基本療養費(Ⅱ)は、同一建物に居住する複数の方を訪問する場合に算定するものです。今回の改定では、この(Ⅱ)について「訪問看護の時間とは30分以上を標準とし、20分を下回るものは算定できない」こと、そして同一敷地内の建物も同一建物として扱うことが定められました。
| 算定するもの | 主な対象 | 訪問時間の扱い |
|---|---|---|
| 訪問看護基本療養費(Ⅰ) | ご自宅で暮らす方への訪問 | 30分〜1時間30分程度が標準。20分の下限は設けられていない(ただし下の「標準を下回る訪問の反復」の規定が適用される) |
| 訪問看護基本療養費(Ⅱ)(ハを除く) | 同一建物に居住する複数の方への訪問 | 30分以上が標準で、20分を下回ると算定できない |
| 精神科訪問看護基本療養費 | 精神科訪問看護 | 別の時間区分の規定があり、30分未満の訪問は、医師が短時間訪問の必要性を認めて精神科訪問看護指示書に明記している場合に算定する |
つまり「医療保険の訪問看護は一律に20分未満だと算定できない」という理解は、行き過ぎです。一方で、「(Ⅰ)なら短い訪問を自由に繰り返してよい」という意味でもありません。そこが次の項目です。
「短ければいい」ではなくなった|標準を下回る訪問を繰り返すと
訪問看護基本療養費(Ⅰ)・(Ⅱ)に共通して、実施時間は1回30分から1時間30分程度を標準とすることが示されています。そのうえで、標準を下回る訪問が「同一日に、同一の利用者に複数回、または複数の利用者に行われるなど、頻繁に行われている場合には、指定訪問看護を実施したとは認められない」とされました。

あわせて、訪問看護は「漫然かつ画一的なものにならないよう、看護目標及び訪問看護計画に沿って行うこと」と明記され、記録には実際の訪問の開始時刻と終了時刻を残すことが求められます。
もうひとつ、(Ⅱ)には細かい規定が加わりました。前回の訪問終了から2時間未満の間隔で、提供時間が20分以上30分未満の訪問を行った場合(緊急の場合を除く)は、それぞれの時間を合算して1回の訪問として扱うというものです。
実務としては、「1回あたりの時間を短くして回数を稼ぐ」という組み方が通らなくなった、と理解するのが近いと思います。回数が必要なら、必要な理由を訪問看護計画書とサービス担当者会議の記録で説明できるようにしておく。そこに尽きます。
回数の原則は、変わっていません
不安をあおりたくないので、変わっていないことも書いておきます。訪問できる回数の原則そのものは、今回の改定で変更されていません。
- 医療保険の訪問看護は原則として週3日まで。厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)や特別管理が必要な状態(別表8)、特別訪問看護指示書が交付されている期間は週4日以上が可能
- 特別訪問看護指示書の交付は月1回(気管カニューレを使用している状態にある方、真皮を越える褥瘡の状態にある方は月2回)
- 介護保険の訪問看護は、ケアプランと区分支給限度基準額の範囲内で組む
判定に迷いやすい別表7・別表8については「別表7・別表8 早見表|訪問看護の医療保険・週4日以上の判定」に、特別指示書の使いどころは「特別訪問看護指示書とは|使いどころ・期間・頻回訪問の組み方」にまとめています。医療保険と介護保険のどちらになるかは「訪問看護は医療保険と介護保険どっち?自己負担の目安を解説」をご覧ください。
費用に静かに加わったもの|訪問看護物価対応料
今回の改定で、医療保険の訪問看護に訪問看護物価対応料が新設されました。訪問看護管理療養費を算定する日に加わる費用で、金額は次のとおりです。

- 月の初日:60円
- 2日目以降:1日につき20円
- 令和9年6月以降は、所定額の100分の200に相当する額を算定する
ご利用者の負担はこの1〜3割ですので、月あたりでは小さな額です。ただ、料金表を掲示している事業所や、費用を説明する立場の方は、説明の中に入れておいたほうがよいと思います。訪問看護の料金の全体像は「訪問看護の料金はいくら?自己負担1〜3割の早見表【船橋・市川】」にまとめています。
事業所側の変化|機能強化型4と、同一建物の複数名訪問
ケアマネジャーの実務に直接は響きませんが、依頼先を選ぶときの材料になるので触れておきます。
ひとつは、機能強化型訪問看護管理療養費4の新設です。精神障害のある方のうち重点的な支援を要する方の受け入れ、24時間対応体制加算の届出、休日・祝日等も含めた計画的な訪問看護の実施などが要件に含まれます。
もうひとつは、同一建物での複数名訪問看護加算・複数名精神科訪問看護加算の区分の細分化です。同一建物内で同じ日に算定する人数に応じて区分が分かれました。
あわせて、訪問看護管理療養費の額も見直され、2日目以降は人数・訪問日数に応じた区分になっています。乳幼児加算は1回1,400円です。
ケアマネジャーが、いま確認しておくとよい5つのこと

- 訪問時間の実績を見る:計画上の時間と、実際の開始・終了時刻が離れていないか
- 短時間・高頻度の組み方になっていないか:1回20〜30分の訪問を同じ日に重ねる形になっていないか
- 同一建物かどうかを把握する:サービス付き高齢者向け住宅や同一敷地内の建物は、(Ⅱ)の対象になり扱いが変わる
- 回数の根拠が書けるか:訪問看護計画書と担当者会議の記録に、その頻度が必要な理由が残っているか
- 費用の説明に物価対応料を入れる:金額は小さくても、後から「聞いていない」となりやすい項目
まとめ
- 20分の下限は同一建物向けの訪問看護基本療養費(Ⅱ)(ハを除く)の規定。ご自宅への訪問で算定する(Ⅰ)に20分の下限はない
- ただし(Ⅰ)にも「30分〜1時間30分程度が標準」「標準を下回る訪問の頻繁な反復は認められない」という規定が適用される
- 訪問できる回数の原則(週3日・別表7・別表8・特別指示書)は変わっていない
- 訪問看護物価対応料が新設された(月初日60円・2日目以降20円、令和9年6月以降は2倍)
制度の読み方で迷われたときは、その場の記憶で判断せず、告示・通知の原文にあたるのがいちばん確実です。当ステーションでも判断に迷う依頼はありますので、遠慮なくご相談ください。
あおい訪問看護ステーション(千葉県船橋市丸山3-1-2-202)
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