エンシュアが保険で出なくなった? 2026年6月からの栄養剤のルールを家族向けに整理

エンシュアが保険で出なくなった? 2026年6月からの栄養剤のルールを家族向けに整理|あおい訪問看護ステーション

2026年6月から、エンシュアなど「医薬品」の経腸栄養剤(=口から飲む、または管で入れる栄養の薬)の保険での扱いが変わりました。ただし、保険で一切出なくなったわけではありません。入院中ではない方への処方では、手術後の方、経管栄養の方、そして食事で必要な栄養をとるのが難しいなどの理由で医師が必要と判断した方に限って、医師がその旨や理由を処方箋とレセプトに書いたうえで保険の対象になる、という整理です。

この記事では、変更の中身、誤解されやすい点、医薬品と食品の違い、費用の考え方を順に整理します。最後に、ご家族やケアマネジャーが主治医・薬剤師に確認しておきたいことをリストにしました。保険で出るかどうかを決めるのは医師です。ご家族ができるのは、相談の材料をそろえておくことです。

※2026年10月時点の情報です。最新の制度は公式情報をご確認ください。

目次

エンシュアは保険で出なくなった? 2026年6月の変更の要点

結論から言うと、「入院中ではない方への処方では、保険で出る場面が3つに整理され、医師がその旨や理由を書くことが条件になった」というのが正確な理解です。「エンシュアは保険適用外になった」という言い方は、半分だけ当たっています。

診察室で、家族が医師に栄養剤のことを相談している様子

何が見直されたのか

見直しの対象は「栄養保持を目的とした医薬品」です。薬効分類が「たん白アミノ酸製剤」の医薬品のうち、効能又は効果が「一般に、手術後患者の栄養保持」で、用法及び用量に「経口投与」が含まれるものを指します。この定義は、診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(医科点数表・PDF)に書かれています。

具体的な品目は、疑義解釈資料の送付について(その4)(PDF)の問33で示されています。イノラス配合経腸用液、エネーボ配合経腸用液、エンシュア・H、エンシュア・リキッド、ツインラインNF配合経腸用液、ラコールNF配合経腸用液の6品目です。見直しの議論は、2026年1月28日の中央社会保険医療協議会 総会(第645回)議事録でも確認できます。

たとえばエンシュア・リキッドの添付文書には、薬効分類名「たん白アミノ酸製剤」、効能又は効果「一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する」と書かれています。用法及び用量は「経管又は経口投与」です。添付文書はPMDAのエンシュア・リキッドの医薬品情報ページから開けます。

手元の栄養剤が対象に当たるかどうかは、薬剤師に「今回の見直しの対象ですか」と聞くのが早道です。

保険の対象になる3つの場合

見直しの対象は、入院中ではない患者(外来や在宅で処方を受ける方)です。診療報酬の算定方法の一部を改正する件(医科点数表・PDF)の「投薬」の通則では、入院中の患者以外の患者にこの医薬品を投薬した場合、原則として保険で算定しないと定めています。そのうえで、次の場合は保険で算定できます。項目の整理は日本栄養士会「令和8年度診療報酬改定のポイント」にもまとめられています。

区分内容条件
① 手術後の患者手術を受けたあとの栄養保持処方箋と診療報酬明細書に、その旨を記載
② 経管栄養の患者胃ろう・鼻からの管などで栄養補給をしている処方箋と診療報酬明細書に、その旨を記載
③ 医師が投与を必要と判断した患者必要な栄養を食事でとることが難しい場合、その他これに準ずる場合処方箋と診療報酬明細書に、その理由を記載

③は「医師が判断した患者」です。どの病状なら③に当たるかを、ご家族やケアマネジャーが決めることはできません。判断するのは主治医です。

「理由の記載」が条件になった

3つのどれに当たる場合も、医師がその旨や理由を処方箋と診療報酬明細書(=レセプト。医療機関が保険者へ出す請求書)に書くことで保険給付の対象になります。

つまり、受診のときに主治医が状態を確かめ、理由を書ける状況かどうかが分かれ目になります。これまで続けて処方されていた方も、次の受診で主治医から説明があるかもしれません。

なぜ見直されたのか(中医協での議論)

見直しの背景は、「同じくらいの栄養をとれる食品が市販されている」という点です。議論の経過は厚生労働省の会議録で公開されています。

同程度の栄養をとれる食品が市販されている

2025年12月12日の中央社会保険医療協議会 総会(第635回)議事録で、事務局は「同程度の栄養を有する食品が市販されており、通常の食事による栄養補給が可能な患者における栄養保持が代替可能と考えられます」と説明しました。

一方で、手術後の栄養保持や、口からの食事が難しい場合の経管栄養補給は、効能・効果に明記されている使い方です。医師が特に必要と認めて使っている患者がいることも、同じ場で示されています。

在宅の高齢者への影響を心配する意見も出た

同じ回の審議では、医師が必要と判断した場合は保険給付の対象にすることが重要だという意見が出ました。食品の栄養剤は費用がかかり、在宅の高齢者には負担になるという指摘もありました。当日の資料は中央社会保険医療協議会 総会(第635回)議事次第にまとまっています。

最終的に、手術後・経管栄養・医師が特に必要と判断した場合を保険の対象として残し、理由の記載を求める形になりました。改定全体の告示・通知・疑義解釈資料は厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」に掲載されています。

2026年6月1日から算定が始まった

この見直しを含む診療報酬の改定は、診療報酬の算定方法の一部を改正する件(制定文・PDF)で「令和八年六月一日から適用する」と定められています。医療機関や薬局によって案内の仕方は違うので、かかりつけの医療機関の説明を優先してください。

医薬品の経腸栄養剤と食品の栄養補助飲料の違い

医薬品の経腸栄養剤と、ドラッグストアなどで買える栄養補助飲料は、見た目が似ていても制度上は別のものです。違いを知っておくと、主治医や薬剤師の説明が理解しやすくなります。

薬局で受け取る薬袋と、店で買う飲料が並べて置かれている様子

医薬品は医師の処方と薬剤師の調剤で受け取る

医薬品の経腸栄養剤は、医師が処方し、薬局で薬剤師が調剤して渡します。効能・効果、用法・用量、注意点は添付文書に書かれています。添付文書はPMDA「医療用医薬品 添付文書等情報検索」で誰でも調べられます。

食品は自分で選んで買う

食品の栄養補助飲料は、本人や家族が選んで購入します。そのなかには、病者用食品やえん下困難者用食品など、特別の用途を表示した「特別用途食品」もあります。特別用途食品は、表示について消費者庁長官の許可を受けて販売される食品です。区分は消費者庁「特別用途食品について」で確認できます。

違いを表で整理

比べる点医薬品の経腸栄養剤食品の栄養補助飲料
手に入れ方医師の処方箋で薬局から店頭や通信販売で購入
決める人医師(処方)・薬剤師(調剤)本人・家族
説明の根拠添付文書(効能・効果、用法・用量)商品の表示(特別用途食品は許可を受けた表示)
費用保険の対象なら自己負担割合に応じた額購入額の全額
2026年6月の見直し対象(上の3つの場合に整理)対象外(もともと保険の対象ではない)

どちらが合うかは、病状や飲み込みの状態、ほかの薬との兼ね合いで変わります。特定の商品を自己判断で選ぶ前に、主治医か薬剤師に相談してください。

費用負担の考え方

費用の面で押さえたいのは、「保険で処方される場合」と「食品で補う場合」で負担の仕組みが違うことです。金額は人によって大きく変わるため、ここでは考え方だけを整理します。

保険で処方される場合

保険の対象になる場合は、ほかのお薬と同じように、年齢や所得に応じた自己負担割合で支払います。医療費の自己負担が高くなった月は、上限を超えた分が支給される高額療養費制度の対象にもなります。上限額の考え方は厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」で確認できます。2026年8月からの見直しも同じページで案内されています。

食品で補う場合

食品の栄養補助飲料は保険の対象ではないため、購入した金額がそのまま負担になります。毎日続けるものなので、月単位での出費を家計の中で見積もっておくと、主治医と相談するときに状況を伝えやすくなります。

訪問看護など在宅サービス全体の自己負担もあわせて整理したい方は、訪問看護の料金と自己負担の目安もご覧ください。

自己判断で切り替えたり止めたりしない

「保険で出ないかもしれないから」と、自己判断で栄養剤を減らしたり食品へ切り替えたりするのは避けてください。栄養の量や成分が変わると、体調に影響することがあります。高齢の方の低栄養は、フレイル(=心身の活力が落ちた状態)を招く重要な因子です。この点は厚生労働省のe-ヘルスネット「高齢者の低栄養予防」でも解説されています。変える必要があるかどうかは、主治医と相談して決めましょう。

経管栄養など在宅で栄養が必要な方の注意点

在宅で栄養の管理が必要な方は、状況によって確認したい点が変わります。ここでは、ご家族がつまずきやすい点を状況別に挙げます。

経管栄養をしている方

胃ろうや鼻からの管で栄養をとっている方は、見直し後も「経管により栄養補給を行っている患者」として保険の対象に含まれる区分です。ただし、この場合も医師が理由を記載することが条件です。処方の内容が変わっていないか、次回の受診や薬の受け取りのときに確認しておくと安心です。

経管栄養の方は、訪問看護が医療保険と介護保険のどちらで入るかが、病名や状態で変わることがあります。区分の考え方は別表7・別表8 早見表で整理しています。

口から食べているが、食事量が落ちている方

口から食べている方で、栄養補助として医薬品の栄養剤を飲んでいる場合は、③「医師が特に必要と判断した患者」に当たるかどうかを医師が判断します。食事の量、体重の変化、飲み込みの様子などを記録しておくと、受診のときに主治医へ伝えやすくなります。

食事内容の相談先としては、管理栄養士もいます。都道府県栄養士会の栄養ケア・ステーションでは、栄養食事指導(外来・在宅)を行っています。仕組みは日本栄養士会「栄養ケア・ステーションとは」で紹介されています。

飲み込みが心配な方

むせることが増えた、食事に時間がかかるようになったなど、飲み込みの変化があるときは、栄養剤の種類より先に飲み込みの状態を主治医に相談してください。とろみの付け方や食べ物の形の調整が必要かどうかも、医師や訪問看護師、管理栄養士と一緒に考えていきます。

主治医・薬剤師に確認しておきたいことリスト

ここまでの内容を、受診や薬の受け取りの前に確認できるリストにまとめました。全部を一度に聞く必要はありません。気になる項目から聞いてみてください。

受診の前に、家族が主治医や薬剤師に聞くことをメモにまとめている様子

主治医に確認したいこと

  • □ 今使っている栄養剤は、今回の見直しの対象ですか
  • □ 今後も保険で処方を続ける予定ですか(処方箋とレセプトへの理由の記載が必要です)
  • □ 保険で出ない場合、食品に切り替えても体調に問題はありませんか
  • □ 1日に必要な量や回数は、今のままでよいですか
  • □ 飲み込みや体重の変化で、気をつけて見ておくことはありますか

薬剤師に確認したいこと

  • □ 次回の受け取りから、自己負担の額は変わりますか
  • □ 処方箋に理由の記載がない場合、どうなりますか
  • □ ほかに飲んでいる薬との飲み合わせで、気をつけることはありますか
  • □ 保管方法や、開けたあとの扱いで注意することはありますか

複数の医療機関から薬が出ている方は、薬局でお薬の情報をまとめて確認してもらうと安心です。電子処方せんに対応した医療機関・薬局では、本人の同意があれば、複数の医療機関・薬局にまたがる直近のお薬情報を医師や薬剤師が確認できます。仕組みは厚生労働省「電子処方せん(国民向け)」で紹介されています。

ケアマネジャー・訪問看護師に伝えてほしいこと

栄養剤の処方が変わったときや、食品に切り替えたときは、担当のケアマネジャーにも伝えてください。ケアプランに書かれた食事や栄養の支援を見直すきっかけになります。ケアマネジャーの役割はケアマネジャーとはで紹介しています。

医師や薬剤師が自宅を訪れて療養上の管理や指導を行う「居宅療養管理指導」という介護保険のサービスもあります。説明は介護サービス情報公表システム「介護保険の解説 サービス編」にあります。訪問看護師も、訪問のときに食事量や体重、飲み込みの様子を見て、主治医への報告に役立てています。

医療の関係学会も、この見直しを受けて医薬品の経腸栄養剤の使い方に関する指針をまとめました。経緯は日本栄養治療学会「医薬品経腸栄養剤適正使用指針の公表について」で公表されています。現場の医師や薬剤師は、こうした資料も踏まえて判断しています。

よくある質問

Q1. エンシュアは2026年6月から保険で出なくなったのですか?A. 一律に出なくなったわけではありません。手術後の方、経管栄養の方、医師が特に医療上必要と判断した方について、医師が理由を処方箋とレセプトに書いた場合に保険の対象になります。ご本人が当てはまるかどうかは主治医にご確認ください。

Q2. 家族が「対象になるはず」と伝えれば、保険で出してもらえますか?A. 保険の対象にするかどうかは、医師が病状を診て判断します。ご家族は、食事量や体重の変化、飲み込みの様子などを記録して伝えることで、判断の材料を増やすことができます。

Q3. 医薬品の栄養剤と、店で買える栄養補助飲料は同じものですか?A. 制度上は別のものです。医薬品は医師の処方と薬剤師の調剤で受け取り、添付文書に効能・効果が書かれています。食品は本人や家族が選んで購入し、保険の対象ではありません。切り替えるかどうかは主治医か薬剤師に相談してください。

Q4. 胃ろうで栄養をとっている場合も変わりますか?A. 経管栄養の方は、見直し後も保険の対象に含まれる区分です。ただし医師が理由を記載することが条件なので、処方の内容に変更がないか、受診や薬の受け取りのときに確認しておくと安心です。

Q5. 誰に相談すればよいか分かりません。A. 処方については主治医、薬の受け取りや自己負担については薬剤師が相談先です。介護保険のサービスを使っている方は、担当のケアマネジャーにも状況を伝えてください。

あおい訪問看護ステーションは、船橋市・市川市・鎌ケ谷市・白井市・習志野市で訪問看護を行っています。在宅での栄養や飲み込みのことでご不安があれば、主治医・ケアマネジャーとの連携も含めてご相談ください。(CTA:お問い合わせフォーム/電話番号は既存の記事末ブロックを使用)

参考リンク(公式ページ)

(以下は作業用。WordPressには貼らない)

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この記事を書いた人

金子誠 看護師

株式会社True Colors 代表・看護師。千葉県船橋市で「あおい訪問看護ステーション」を運営しています。

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