身元保証人がいない親の入院・施設入居、どうする?|相談先と備え方

身元保証人がいない親の入院・施設入居、どうする?|あおい訪問看護ステーション

入院や施設入居のときに「身元保証人」を求められても、保証人がいないことだけを理由に入院を断ることは医師法に抵触する、というのが厚生労働省の示している考え方です。保証人に求められている役割は、地域包括支援センターや成年後見制度などで分けて担える場合があります。民間の身元保証サービスを使うなら、国のガイドラインに沿って契約内容を確かめることが大切です。

この記事では、離れて暮らすご家族に向けて、次の3つを整理します。

  • 「身元保証人」を求められたときの考え方と、困りごと別の相談先
  • 身元保証などの民間サービス(高齢者等終身サポート事業)を使うときの注意点
  • 在宅サービスを組み合わせて「自宅で暮らし続ける」という選択肢

※2026年10月時点の情報です。最新の制度は公式情報をご確認ください。

目次

「身元保証人」を求められたら、まず知っておきたいこと

「身元保証人がいない=入院も入居もできない」とは限りません。病院や施設が保証人に期待している役割を分けて考えると、ほかの手段で埋められるものが見えてきます。

離れて暮らす親のことを電話で気にかける家族の様子

病院が身元保証人に期待している6つの役割

厚生労働省が掲載している身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドラインは、医療機関が「身元保証・身元引受等」に求める役割を、次の6つに整理しています。

病院が期待する役割代わりに相談できる先の例
① 緊急の連絡先友人・知人、ケアマネジャー、地域包括支援センター
② 入院計画書(治療の説明)への対応本人への説明が基本。希望すれば家族やケアマネジャーが同席
③ 入院中に必要な物品の準備病院の購入・貸し出し、有償のボランティア団体やリース
④ 入院費などの支払い本人の支払い、成年後見人等による支払代行、社会福祉協議会の金銭管理の支援
⑤ 退院支援ケアマネジャー、地域包括支援センター、病院の相談窓口
⑥ 亡くなった時の遺体・遺品の引き取りや葬儀親族等がいない場合は市町村。生前の死後事務の契約

同じガイドラインは、手術などの医療行為への同意は本人だけのものであり、身元保証人などの第三者に同意の権限はないという考え方も示しています。だからこそ、元気なうちに本人の希望を聞いておくことが役に立ちます。

保証人がいないことだけを理由に入院を断ることの扱い

厚生労働省は2018年に身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて(PDF)という通知を出しました。入院による治療が必要なのに、身元保証人等がいないことだけを理由に医師が入院を拒むことは、医師法第19条第1項に抵触すると明記しています。

病院には「保証人がいない」と率直に伝え、緊急連絡先や支払い方法をどう用意するかを一緒に相談しましょう。

介護施設の入所でも考え方は同じ

介護施設についても、2018年の厚生労働省の通知市町村や地域包括支援センターにおける身元保証等高齢者サポート事業に関する相談への対応についてがあります。介護保険施設に関する法令には身元保証人等を求める規定がなく、身元保証人等がいないことはサービス提供を拒む正当な理由に当たらない、という内容です。

ただし、通知が名指ししているのは介護保険施設(特別養護老人ホームなど)です。有料老人ホームなどの住まいは、入居の条件を施設ごとに確認しておきましょう。

困りごと別の相談先(地域包括支援センター・病院・市・社会福祉協議会)

相談先は、困りごとの種類で選ぶと迷いにくくなります。離れて暮らすご家族は、親の住んでいる市区町村の窓口に連絡します。

困りごと別の相談先一覧

高齢の親と家族が相談員と一緒に、これからの暮らしについて話し合う様子
困りごとまず相談する先
介護・暮らし全般、何から手をつけるか分からない親の住所地の地域包括支援センター
入院中の支払い・退院後の生活・転院先入院先の病院の相談窓口(医療ソーシャルワーカー)
判断力が落ちてきて、契約やお金の管理が心配地域包括支援センター、成年後見制度の相談窓口
日々のお金の出し入れや書類の管理を手伝ってほしい市区町村の社会福祉協議会
身元保証サービスの契約・解約でトラブルになった消費生活センター(消費者ホットライン188)
頼れる身寄りがなく、入退院の付き添いや死後の手続きが不安(船橋市)船橋市社会福祉協議会

地域包括支援センターは「最初の窓口」

地域包括ケアシステム(厚生労働省)のページでは、地域包括支援センターを、高齢者の総合相談や権利擁護などを担う機関と説明しています。設置しているのは市町村です。

船橋市では船橋市地域包括支援センターが市内14か所にあり、介護・福祉・医療・認知症の相談や成年後見制度の相談に応じています。親が要介護認定をまだ受けていない段階でも相談できます。手続きの流れは「親の介護が始まったら最初にやること5つ」にまとめています。

入院中なら病院の相談窓口へ

入院中の困りごとは、病院の相談室や地域連携室にいる医療ソーシャルワーカー(=入院・退院や医療費、生活の困りごとを相談できる専門職)に相談します。保証人を求められて困っていることも、ここで率直に伝えてかまいません。

成年後見制度と日常生活自立支援事業でできること・できないこと

判断力の衰えに備える公的な仕組みは、主に2つあります。ただし、どちらも「身元保証人」そのものの代わりではありません。

成年後見制度:元気なうちの「任意後見」と、衰えてからの「法定後見」

厚生労働省の成年後見はやわかりは、成年後見制度を、ひとりで決めることが心配な人の契約や手続きを手伝う制度と紹介しています。成年後見制度の種類には、本人が選んだ人とあらかじめ契約しておく「任意後見」と、家庭裁判所が後見人等を選ぶ「法定後見」があります。

任意後見契約は公正証書で結び、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだときから効力が生じます。仕組みは法務省の任意後見制度Q&Aで確認できます。

法務省の法定後見制度Q&Aは、成年後見人の仕事を財産の管理や介護契約の締結、医療費の支払いなどと説明しています。食事の世話や実際の介護は、一般に成年後見人の職務ではありません。申立ては本人や親族のほか、市町村長もできます。

相談先は、成年後見はやわかりの相談窓口のご案内にまとまっています。任意後見は公証役場、法定後見は地域の権利擁護の相談窓口、手続きは家庭裁判所が窓口です。申立ての書式は裁判所の後見ポータルサイトで確認できます。

船橋市には成年後見制度利用支援事業があります。身寄りがないなどの理由で申立てができない方について、市長が代わりに申し立てます。

日常生活自立支援事業:日々のお金と手続きの手伝い

日常生活自立支援事業(厚生労働省)は、判断能力が不十分な方の福祉サービスの利用や日常的な金銭管理を、契約に基づいて手伝う事業です。本人に契約の内容を判断できる力があることが条件です。相談は住まいの市区町村の社会福祉協議会で受けています。

船橋市社会福祉協議会では、ふなばし高齢者等権利擁護センター『ぱれっと』が、福祉サービスの利用援助や金銭管理サービスなどを契約で行っています。利用料がかかるので、内容とあわせて確認しましょう。

どちらも「保証人」にはならない

国のガイドラインは、成年後見人等が保証人として入院費を負担することはないと整理しています。日常生活自立支援事業も、身元保証人として契約するものではありません。病院や施設には「成年後見人がいる」「社会福祉協議会の金銭管理を使っている」と伝え、保証人に代わる体制として説明するのが実際的です。

身元保証サービス(高齢者等終身サポート事業)を使うときの注意点

家族の代わりに入院の手続き支援や死後の事務を行う民間サービスを、国は「高齢者等終身サポート事業」と呼んでいます。契約期間が長く、亡くなった後のサービスを含むため、契約前の確認が欠かせません。

国のガイドラインが示すポイント

2024年6月、内閣官房と関係府省庁が高齢者等終身サポート事業者ガイドライン(法務省)を公表しました。主なポイントは次のとおりです。

  • 事業者は、契約書と重要事項説明書を交付して契約内容を説明することが重要
  • 寄附や遺贈を契約の条件にすることは避ける。遺贈を受ける場合も公正証書遺言によることが望ましい
  • 前払金(預託金)を預かる場合は、事業者の運営資金と明確に分けて管理することが望ましい
  • 利用者の判断能力が不十分になった場合は、成年後見制度の活用が必要

契約前に家族と一緒に確かめたいこと

ガイドラインには利用者向けのチェックリスト(消費者庁・PDF)が付いています。その中から、ご家族と一緒に見ておきたい項目を抜き出しました。

  • □ 身元保証の内容と費用の取り扱いが明らかになっているか
  • □ 入退院時に何をしてくれるのかが具体的に書かれているか
  • □ 預託金の額と根拠、管理方法が明らかになっているか
  • □ 解約の方法と、解約時の返金の扱いが書かれているか
  • □ 死因贈与や寄附を契約の条件にしていないか
  • □ 重要事項説明書と契約書を書面で受け取れるか
  • □ 判断能力が低下したときの扱いが定められているか

その場で決めず、持ち帰って家族で読むだけでも見落としは減ります。

不安やトラブルのときの相談先

消費者庁の高齢者等終身サポート事業の利用に関する注意点は、不安がある場合は消費生活センターや地域包括支援センターに相談するよう呼びかけています。国民生活センターの身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意も、預託金の用途や解約時の返金条件を前もって確認するよう勧めています。

契約や解約で困ったときは、消費者ホットライン(188)に電話すると、近くの消費生活センター等につながります。

船橋市の取り組みと、国の新しい制度

民間サービスだけに頼らない仕組みも、自治体と国の両方で動いています。

船橋市「身寄りのない高齢者等サポート事業」

船橋市は2025年10月1日から身寄りのない高齢者等サポート事業を始めました。窓口は船橋市社会福祉協議会です。対象は、市内に住む65歳以上の単身世帯で、子どもや親族がいない、または疎遠であるなど頼れる身寄りがいない方です。

サービスは次の3つのパッケージです。利用には本人の費用負担があります。

  • 死後事務サービス(葬儀・火葬・納骨、官公庁への手続き、家財処分など)
  • 見守り・安否確認サービス(定期的な電話と自宅訪問)
  • 入退院時等支援サービス(入退院の付き添い、支払い代行の手続きなど)

離れて暮らす子どもがいる場合に対象となるかは、個別に確認が必要です。まずは社会福祉協議会に相談してみましょう。

2026年の社会福祉法改正

2026年には社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)が成立しました。社会福祉法等の一部を改正する法律の概要(厚生労働省・PDF)では、頼れる身寄りがいない高齢者等への日常生活支援、入院等の手続支援、死後事務支援を第二種社会福祉事業に位置づけるとしています。

施行日は改正事項ごとに異なり、この支援については「法律の公布後2年以内に政令で定める日」と「2027年4月1日」が示されています。法案の資料は第221回国会(令和8年特別会)提出法律案(厚生労働省)に掲載されています。お住まいの地域でいつ、どの窓口が担うのかは、市区町村の発表を確認してください。

「自宅で暮らし続ける」という選択肢と、離れた家族の見守り方

入院や施設入居だけが答えではありません。本人が自宅を望むなら、在宅サービスを組み合わせて暮らしを支える方法もあります。保証人の問題がすべて消えるわけではありませんが、日ごろから関わる専門職がいることは、入院や退院のときの支えになります。

在宅で暮らす高齢の方の自宅を訪問スタッフが訪ねる様子

ケアマネジャーを窓口に、在宅サービスを組み合わせる

要介護認定を受けると、ケアマネジャー(=介護サービスの計画を立て、事業所との調整を担う専門職)と一緒にケアプランを作ります。離れて暮らすご家族にとっては、連絡と相談の窓口になる存在です。役割や探し方は「ケアマネジャーとは」で詳しく紹介しています。

地域の訪問看護や訪問介護の事業所は、介護サービス情報公表システムで検索して比べられます。

訪問看護・訪問介護が担えること

訪問看護は、主治医の指示書に基づいて看護師などが自宅を訪ね、体調の確認や服薬の管理、医療的なケアを行うサービスです。対象や使える保険は「訪問看護とは」で解説しています。訪問介護は、ホームヘルパーが入浴や食事などの介助、調理や掃除などの家事を手伝うサービスです。

定期的に自宅を訪ねる専門職がいると、離れて暮らす家族がケアマネジャーに親の様子を尋ねる手がかりが増えます。

離れて暮らす家族が、元気なうちに確認しておくことリスト

確認すること理由相談先・参考
緊急連絡先になれる人(家族・友人・知人)病院が最初に確認する項目だから本人と家族で話し合う
親の住所地の地域包括支援センターいざという時の最初の窓口になる市区町村のホームページ
かかりつけ医・服用中の薬・保険証の保管場所入院時の手続きと治療の説明に役立つかかりつけ医・薬局
通帳・年金・支払い方法(口座引き落としなど)入院費や施設費の支払いを止めないため本人、社会福祉協議会
判断力が落ちたときに誰に任せたいか任意後見の検討は元気なうちしかできない公証役場、成年後見制度の相談窓口
治療や最期の過ごし方の希望医療の同意は本人だけのものだから人生会議(ACP)
民間の身元保証サービスの契約の有無と内容入退院時に事業者と連携が必要になる契約書・重要事項説明書

治療や過ごし方の希望を話し合う「人生会議」は、厚生労働省の人生会議ポータルサイトで紹介されています。家族での進め方は「「人生会議(ACP)」を家族で始めるには」にまとめています。

よくある質問

Q1. 身元保証人がいないと、親は入院できませんか?

厚生労働省は、入院が必要なのに保証人がいないことだけを理由に入院を断ることは、医師法に抵触すると通知しています。緊急連絡先や支払い方法を、病院の相談窓口と一緒に考えましょう。

Q2. 子どもが遠方に住んでいて、保証人になれません。どうすればいいですか?

まず親の住所地の地域包括支援センターに相談してください。病院が保証人に期待する役割は、ケアマネジャーや成年後見制度、社会福祉協議会などで分けて担える場合があります。

Q3. 成年後見人は身元保証人になってくれますか?

国のガイドラインは、成年後見人等が保証人として入院費を負担することはないと整理しています。一方で、本人の財産からの支払代行や、医療・介護の契約の手続きは成年後見人等の業務に含まれます。

Q4. 民間の身元保証サービスを選ぶときは、何を確認すればいいですか?

重要事項説明書と契約書の交付、預託金の管理方法、解約時の返金の扱い、寄附を条件にしていないかを確認します。消費者庁が公開しているチェックリストが参考になります。

Q5. 船橋市に住む親が、身寄りのない高齢者向けの支援を使えるか知りたいです。

船橋市社会福祉協議会が窓口の「身寄りのない高齢者等サポート事業」があります。対象になるかどうかは、社会福祉協議会に問い合わせて確認してください。

あおい訪問看護ステーションは、船橋市・市川市・鎌ケ谷市・白井市・習志野市で訪問看護を行っています。同じ株式会社True Colorsの「ヘルパーセンターオリーブ」(訪問介護)、「あおいケアプランセンター」「あやめケアプランセンター」(居宅介護支援)とも連携しながら、離れて暮らすご家族からの在宅生活のご相談をお受けしています。まずはお気軽にお問い合わせください。

参考リンク(公式ページ)

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この記事を書いた人

金子誠 看護師

株式会社True Colors 代表・看護師。千葉県船橋市で「あおい訪問看護ステーション」を運営しています。

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