退院が決まると、「帰ってくる前に手すりを付けておこう」「つまずかないよう家具を片付けよう」と準備を始めるご家族は少なくありません。その気持ちはとても大切です。ただ、手すりの位置や高さ、片付ける家具は、退院するときのご本人の動き方で決まります。先に工事をする前に、立ち上がり方や歩き方を知っている専門職へひと声かけると、実際に使える住まいになりやすくなります。
この記事では、次のことが分かります。
- 手すりを付ける前に確かめておきたい、ご本人の動きのポイント
- 退院前カンファレンスや家屋調査(退院前訪問)で家族が聞いておくこと
- 福祉用具のレンタル・購入と、介護保険の住宅改修の違い
- 住宅改修は「工事の前に申請」が必要なこと
※2026年10月時点の情報です。最新の制度は公式情報をご確認ください。
退院前の住まいの準備は「付ける前に相談」が近道です
結論からお伝えすると、手すりの取り付けや家具の移動は、ご本人の退院時の状態を知る人と相談してから決めるのがおすすめです。

「標準の高さ」がその人に合うとは限りません
手すりの高さや位置について調べると、目安の数字が見つかることがあります。けれども、使いやすい位置は身長だけでは決まりません。立ち上がるときにどちらの手で、どの方向へ体を引き寄せるのか。歩くときにどのくらいの間隔でつかまりたいのか。こうした動き方で、同じ家でも合う位置が変わります。「標準の高さで付けたら、本人には使いにくかった」という声が聞かれるのは、このためです。
片付けた家具が「つかまる場所」だったこともあります
つまずき防止のために、廊下や寝室の家具を片付けることもあるでしょう。ただ、入院前のご本人が、たんすや机の角に手をついて移動していた場合、片付けたことでつかまる場所がなくなることがあります。家具を動かす前に「普段どこに手をついていたか」を思い出しておくと、相談がしやすくなります。
入院中に動き方が変わることもあります
入院中の治療やリハビリによって、入院前と退院時では歩き方や立ち上がり方が変わることがあります。杖や歩行器を使うようになった、体の片側に力が入りにくくなった、といった変化があれば、必要な手すりの位置も変わります。最新の状態を知っているのは、病院のリハ職や看護師です。
手すりの高さ・位置は「本人の動き」と「動線」で決まります
手すりや福祉用具を考えるときは、家の形より先に、ご本人の動きを整理すると話が早く進みます。
確かめておきたい5つの動き
- 立ち上がり:ベッド・いす・便座から、何につかまって立っているか
- 歩き方:杖や歩行器を使うか、どのくらいの距離を歩けるか
- 利き手:つかまるとき、主にどちらの手を使うか
- 麻痺や痛みのある側:力が入りにくい側、痛む側はどちらか
- 動線:寝室からトイレ、浴室、玄関までの道のりと、途中の段差
トイレと浴室は、特に一緒に考えたい場所です
トイレや浴室は、立つ・座る・向きを変える・またぐといった動作が続く場所です。手すりの左右どちらに付けるか、縦向きか横向きかは、利き手や麻痺のある側で変わります。夜間にトイレへ行くことが多い方は、寝室からトイレまでの明るさや足元も確認しておきましょう。
家族が先に用意しておくと役立つもの
- 間取りの簡単なメモ(手書きで十分です)
- 段差、トイレ、浴室、玄関の写真
- 入院前の生活の様子(よく座っていた場所、手をついていた家具)
こうした材料があると、専門職がご本人の動きと住まいを結びつけて考えやすくなります。
退院前カンファレンスと家屋調査で確認すること
退院前には、病院の担当者と在宅の支援者が情報を共有する場が設けられることがあります。ご家族も参加できる場合は、住まいのことを相談するよい機会です。
退院前カンファレンスは住まいの相談の場でもあります
退院前カンファレンスは、病院の医師・看護師・リハ職・医療ソーシャルワーカーと、ケアマネジャーや訪問看護などの在宅側が集まり、退院後の生活について話し合う場です。流れや準備は退院後の生活が不安な方へ|退院前カンファレンスで詳しく紹介しています。
千葉県では、ケアマネジャーと病院の担当者、かかりつけ医、訪問看護師などが利用者の情報を共有するための千葉県地域生活連携シートという参考様式が用意されています。退院の際はこのシートのB表などを使って必要な情報を共有し、ケアマネジャーがケアプランの作成に活用します。
家屋調査(退院前訪問)が行われることもあります
病院によっては、退院前に病院のリハ職や看護師が自宅を訪ね、段差や動線、トイレや浴室の様子を確認することがあります。家屋調査や退院前訪問と呼ばれます。実施するかどうかは病院や入院の状況によって異なるため、気になる場合は病棟の看護師や医療ソーシャルワーカーに尋ねてみてください。行われない場合でも、先ほどの写真や間取りメモがあれば、病院のリハ職から助言を受けやすくなります。
誰に何を聞くか

| 相談先 | 主に聞けること |
|---|---|
| ケアマネジャー(要介護の方)/地域包括支援センター(要支援の方など) | ケアプランへの組み込み、福祉用具や住宅改修の手続き、住宅改修の理由書の作成、サービス事業所との調整 |
| 病院のリハ職(理学療法士・作業療法士など) | 退院時の立ち上がり・歩き方、手すりが必要な場所と向き、合いそうな福祉用具の種類 |
| 病院の看護師 | 退院後の体調管理、夜間の様子、トイレや入浴で注意すること |
| 訪問看護・訪問リハビリ | 退院後に自宅で実際の動きを見て、手すりや用具の使い方・置き方を一緒に調整 |
| 福祉用具専門相談員(福祉用具貸与・販売事業所) | 用具の選び方、試用、設置・調整、レンタルと購入のどちらが合うか |
ケアマネジャーの役割はケアマネジャーとはにまとめています。厚生労働省の居宅介護支援の解説ページでは、ケアプランの作成について利用者負担がないことも案内されています。
手すりは「レンタル」から試す選択肢もあります
壁に穴を開ける工事の前に、置くタイプの手すりや歩行器をレンタルして試す方法もあります。退院直後は体の状態が変わりやすいので、調整しやすい方法から始めるのもひとつの考え方です。
介護保険の福祉用具貸与(レンタル)
福祉用具貸与の対象は、特殊寝台、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、車いす、歩行器、歩行補助つえ、移動用リフトなど13品目です。工事を伴わない手すりやスロープも含まれます。利用者負担は原則1割(一定以上の所得がある方は2割または3割)です。
なお、車いすや特殊寝台など一部の品目は、要支援1・2、要介護1の方は原則として保険給付の対象になりません。ご本人の要介護度で使えるかどうかは、ケアマネジャーに確認しましょう。
特定福祉用具販売(購入)
入浴や排せつに使う用具など、レンタルになじまないものは購入が対象です。特定福祉用具販売の対象は、腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽、排泄予測支援機器などです。固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、歩行補助つえ(松葉杖を除く)は、レンタルと購入のどちらかを選べます。
船橋市の特定福祉用具購入費の支給制度では、年度で10万円を限度に、その9割〜7割が支給されます。指定を受けていない事業所から購入した場合は支給の対象になりません。購入前にケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談すると安心です。
ベッド周りの安全も確認しましょう
介護ベッドを使う場合は、ベッドと柵や手すりの間のすき間にも気を配りましょう。消費者庁は介護ベッドと柵や手すりとの間に首などが挟まれる事故への注意を呼びかけています。すき間を埋める対応品やカバーで埋めること、古いベッドを使っている場合は特に注意することが挙げられています。
介護保険の住宅改修は「工事の前に申請」が必要です
壁に手すりを取り付ける、段差をなくすといった工事には、介護保険の住宅改修費を使える場合があります。いちばん大切なのは、工事を始める前に市への申請が必要だということです。

対象になる工事と支給の限度
船橋市の住宅改修費の支給制度では、対象工事と給付が次のように示されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる方 | 要支援・要介護の認定を受け、介護保険被保険者証に記載された住所の家屋を改修する方 |
| 対象工事 | 手すりの取付け/段差の解消/床材の変更/扉の取替え/洋式便器などへの便器の取替え/これらに付帯して必要な工事 |
| 支給の限度 | 20万円を限度に、その9割〜7割を支給(自己負担は1〜3割) |
| 支払い方法 | 償還払い(全額を支払った後に給付を受ける)/受領委任払い(自己負担分だけを支払う) |
船橋市での手続きの流れ
- ケアマネジャーなどに相談し、改修の内容を決める
- 施工事業者に見積書を作ってもらう
- 申請書、見積書、ケアマネジャーが作成する住宅改修が必要な理由書、日付入りの工事前写真などを介護保険課へ提出する(持ち家でない場合は住宅所有者の承諾書も必要)
- 申請から2週間程度で、着工の許可通知が届く
- 通知が届いてから工事を始める
- 工事後に完了報告書、領収証、工事費内訳書、工事後の写真を提出する
申請は窓口のほか、船橋市の介護保険関係手続きのオンライン申請(ぴったりサービス)でも、住宅改修前・住宅改修後の両方を行えます。
工事内容が変わるときは、着工前に相談を
船橋市は、事前申請から工事内容が変わった場合は介護保険課へ報告するよう案内しており、無断で変更した場合は給付の一部または全部が受けられない可能性があるとしています。現場で「やっぱり位置をずらしたい」となったときは、工事を進める前にケアマネジャーと市に相談しましょう。
退院日から逆算して、自治体の日数を確かめる
退院日に工事を間に合わせたい場合は、申請から許可までの日数を逆算する必要があります。船橋市は2週間程度です。鎌ケ谷市の住宅改修費の支給のページでは、承認まで1〜10日程度と案内しています。このように、日数や書類は自治体ごとに異なります。
近隣市の案内もあわせて確認できます。
退院が迫っていて工事が間に合わない場合は、レンタルの手すりでつなぐ方法もあります。慌てて契約を急がず、まずはケアマネジャーに相談してください。突然の訪問勧誘で住宅の工事を勧められ、契約に不安があるときは、消費者ホットライン188で身近な消費生活相談窓口を案内してもらえます。
退院前に家族が確認しておくことチェックリスト
退院前の準備を、ひとつの表にまとめました。カンファレンスや電話相談の前に見ておくと、聞き漏れを減らせます。

| チェック | 確認すること | 主な相談先 |
|---|---|---|
| □ | 要介護認定を受けているか、申請中か | ケアマネジャー/市の介護保険窓口 |
| □ | 担当のケアマネジャー(または地域包括支援センター)が決まっているか | 病院の医療ソーシャルワーカー |
| □ | 退院時の立ち上がり方、歩き方、杖や歩行器の有無 | 病院のリハ職 |
| □ | 利き手と、麻痺や痛みのある側 | 病院のリハ職・看護師 |
| □ | 寝室・トイレ・浴室・玄関の動線と段差 | 病院のリハ職/ケアマネジャー |
| □ | 入院前につかまっていた家具や場所 | 家族で思い出しておく |
| □ | 家屋調査(退院前訪問)の予定があるか | 病棟の看護師・医療ソーシャルワーカー |
| □ | 手すりはレンタルか工事か、工事なら事前申請の日程 | ケアマネジャー/福祉用具専門相談員 |
| □ | 退院後に訪問看護や訪問リハビリを使うか | ケアマネジャー/主治医 |
要介護認定の申請は、船橋市では介護保険に関する申請窓口のページで、市役所のほか船橋駅前総合窓口センターや出張所でも受け付けていることが案内されています。担当のケアマネジャーがいない場合や、どこに相談すればよいか分からない場合は、市内14か所に設置されている船橋市地域包括支援センターが相談窓口になります。
退院後も、住まいは少しずつ整えていけます
退院前にすべてを完成させる必要はありません。実際に自宅で暮らし始めてから分かることも多いからです。
自宅での動きを見てから調整できます
病院の廊下と自宅の廊下では、幅も床の素材も違います。退院後に自宅で動いてみると、「ここにもう一本手すりがあると楽」「このいすは低すぎる」といった点が見えてきます。そこで手すりや福祉用具を見直していく流れも、無理のない進め方です。
訪問看護・訪問リハビリでできること
訪問看護は、主治医の指示に基づいて看護師などが自宅を訪問し、療養上の世話や診療の補助を行うサービスです。リハビリテーションも含まれます。訪問リハビリテーションでは、理学療法士や作業療法士などが自宅を訪問し、日常生活の自立に向けたリハビリを行います。どちらも、自宅での実際の動きを見ながら、手すりの位置や用具の使い方を一緒に確かめられます。両者の違いは訪問リハビリと訪問看護のリハビリの違いで解説しています。
あおい訪問看護ステーションのご案内
あおい訪問看護ステーションは、船橋市・市川市・鎌ケ谷市・白井市・習志野市で訪問しています。看護師・理学療法士・作業療法士が在籍し、体調の確認とあわせて、自宅での立ち上がりや歩き方、トイレや浴室の動作を一緒に確認できます。同じ法人の「あおいケアプランセンター」「あやめケアプランセンター」とも連携しています。退院後の住まいや動き方で迷ったときは、担当のケアマネジャーや主治医とあわせてご相談ください。
よくある質問
Q1. 退院前に手すりを付けておいたほうがいいですか?
A. 付ける前に、ご本人の退院時の動きを知る病院のリハ職やケアマネジャーへ相談することをおすすめします。立ち上がり方や利き手、麻痺のある側によって、合う位置や向きが変わるためです。
Q2. 介護保険の住宅改修は、工事の後から申請できますか?
A. 工事の前に申請が必要です。船橋市では、事前申請の後に届く着工の許可通知を待ってから工事を始めます。工事後に完了報告書や領収証などを提出します。
Q3. 住宅改修で支給されるのはいくらまでですか?
A. 船橋市では、20万円を限度に、その9割〜7割が支給されます(自己負担は1〜3割)。手続きや日数は自治体によって異なるため、お住まいの市の案内をご確認ください。
Q4. 手すりはレンタルできますか?
A. 工事を伴わない手すりは、介護保険の福祉用具貸与の対象品目に含まれます。利用者負担は原則1割(所得により2割または3割)です。工事の前にレンタルで試す方法もあります。
Q5. 誰に最初に相談すればよいですか?
A. 担当のケアマネジャーがいればケアマネジャーへ、いなければ病院の医療ソーシャルワーカーや地域包括支援センターへ相談してください。退院時の動き方については、病院のリハ職や看護師に聞いておくと準備が進めやすくなります。
参考リンク(公式ページ)
- 船橋市「住宅改修費の支給制度」
- 船橋市「特定福祉用具購入費の支給制度」
- 船橋市「介護保険関係手続きで「ぴったりサービス」によるオンライン申請ができます」
- 船橋市「介護保険に関する申請窓口」
- 船橋市「船橋市地域包括支援センター」
- 市川市「住宅改修費支給申請について」
- 鎌ケ谷市「住宅改修費の支給について」
- 習志野市「介護保険を使って住宅改修をする」
- 白井市「福祉用具購入費等申請書様式一覧」
- 千葉県「千葉県地域生活連携シート(千葉県参考様式)について」
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの? – 福祉用具貸与」
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの? – 特定福祉用具販売」
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの? – 居宅介護支援」
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの? – 訪問看護」
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「どんなサービスがあるの? – 訪問リハビリテーション」
- 消費者庁「介護ベッドと柵や手すりとの間に首などが挟まれる事故に注意」
- 消費者庁「消費者ホットライン」

