訪問という働き方には、病院にはないリスクがあります。一人で、他人の家という密室に入る。周りに同僚はいません。
2026年10月から、事業主にカスタマーハラスメント対策が義務づけられます。訪問系のサービスにとっては、これまで個人の我慢で処理されてきたことを、事業所として扱うという転換点です。
この記事では、何が義務化されるのか、訪問という働き方の特有のリスク、そして事業所として決めておくべきことを整理します。※2026年9月時点の情報です。
何が義務化されるのか
改正された労働施策総合推進法により、事業主には職場におけるカスタマーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を講じることが義務づけられます。
ポイントは、「顧客からの言動」も事業主が対応すべき対象になったという点です。これまでハラスメント対策といえば主に職場内(上司・同僚)が対象でしたが、外部からの言動についても事業主の責任範囲に入りました。

介護・医療の現場については、厚生労働省が以前から介護現場におけるハラスメント対策の資料を出しており、社会保障審議会の分科会でも継続して議論されています。義務化はその延長線上にあります。
訪問という働き方の、特有のリスク
施設や病院と違い、訪問には次のような条件があります。

- 一人で入る:何かあっても、その場に助けを呼べる同僚がいない
- 密室である:第三者の目がなく、後から状況を証明しにくい
- 相手の家である:立場として断りにくい。「お客様の家」という意識が働く
- 関係が続く:一度きりではなく、来週も再来週も訪問する
- 逃げ場がない:玄関までの動線が塞がれると、物理的に出られない
ここに「これくらいは我慢するもの」という文化が重なると、被害が表に出てきません。実際、現場では「言っても仕方ない」「自分の対応が悪かったのかも」と抱え込まれることが少なくありません。
事業所として決めておくべきこと
義務化を受けて、訪問系の事業所が整理しておくべきことを挙げます。

1. 何がハラスメントに当たるかの線引き
「厳しい要求」と「ハラスメント」は違います。線引きを事業所として持っていないと、判断が現場の個人任せになります。身体的暴力、暴言、性的な言動、正当な範囲を超えた要求。何を報告対象とするかを決めておく必要があります。
2. その場で訪問を中断してよいというルール
これがいちばん大事だと考えています。危険を感じたら訪問を切り上げてよいと事業所が明言していなければ、職員はその場に留まります。「サービスを提供しないと算定できない」という思考が働くからです。中断の判断を個人に負わせない、というのが事業所の仕事です。
3. 複数名での訪問という選択肢
制度上、複数名での訪問は可能です。ただし利用者の費用負担が増えるため、現場が言い出しにくいという問題があります。誰がどう判断するのかを決めておかないと、選択肢として機能しません。
4. 記録と相談の窓口
何かあったときに、誰に、どう報告するのか。記録が残らなければ、事業所として対応もできませんし、契約の見直しという判断もできません。
5. 契約解除という選択肢を持っておく
最終的に、サービスを継続できないという判断もあり得ます。その基準と手順を持っていることが、現場の安心につながります。
ご利用者・ご家族へのお願い
ここまで職員側の話をしてきましたが、ご利用者・ご家族に向けてもお伝えしたいことがあります。
ほとんどのご家庭では、こうした問題は起きません。むしろ、看護師が安心して訪問できる関係のほうが、受けられるケアの質は上がります。気になることがあれば、その場で我慢せず、事業所にお伝えください。担当の変更も含めて調整できます。
サービス内容で「これは頼めるのか」と迷われることも多いと思います。線引きは「訪問看護に「頼めないこと」|計画書と指示書の範囲を先にお伝えします」に整理しました。合わないと感じたときの事業所の変え方は「訪問看護は変更できる|合わないときの手順と3つの準備|船橋・市川」をご覧ください。
働く方へ
訪問看護への転職を考えている方にとって、この点は確認しておく価値があります。求人票には書かれていないことが多いので、面談で聞いてみてください。
- 危険を感じたときに訪問を中断してよいルールがあるか
- 複数名訪問を、誰がどう判断しているか
- ハラスメントを受けたとき、どこに報告するか
- 実際に契約を見直した事例があるか
訪問看護の働き方全般は「訪問看護師の働き方とは?病棟との違い・1日の流れ|船橋の求人」を、オンコール体制は「訪問看護のオンコールは大変?あおいの体制と負担軽減の工夫」をご覧ください。
まとめ
- 2026年10月から、事業主にカスタマーハラスメント対策が義務づけられる
- 訪問は、一人・密室・相手の家・関係が続く、という特有のリスクがある
- 事業所は、線引き/中断してよいルール/複数名訪問の判断/記録と窓口/契約解除の基準を決めておく
- 職員が安心して訪問できることは、ご利用者が受けるケアの質にもつながる
あおい訪問看護ステーション(千葉県船橋市丸山3-1-2-202)
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