「薬を飲んでくれない」「病院に行きたがらない」「同じことを何度も聞かれて、こちらが参ってしまう」。認知症のご家族を介護されている方から、いちばん多くうかがう困りごとです。
訪問看護は、こうした場面で何ができるのか。そして、何が期待されがちだけれどできないのか。正直なところをお伝えします。※2026年9月時点の情報です。
認知症だけでは、医療保険の訪問看護にはなりません
まず制度の話をひとつ。訪問看護には医療保険で使う場合と介護保険で使う場合がありますが、認知症という診断だけでは医療保険の対象になりません。要介護認定を受けていれば、介護保険での利用が原則です。
ただし、認知症に加えて医療的な管理が必要な状態(点滴、在宅酸素、褥瘡の処置など)がある場合や、精神科の主治医から精神科訪問看護指示書が出る場合は、扱いが変わることがあります。詳しくは「訪問看護は医療保険と介護保険どっち?自己負担の目安を解説」をご覧ください。

服薬の支援|「飲ませる」ではなく「飲める形にする」
薬を飲んでもらえない場合、ご家族は「どうやって飲ませるか」を考えがちです。訪問看護が最初にするのは、なぜ飲めていないのかを分けることです。

- 忘れている:飲んだこと自体を覚えていない。二重に飲んでしまうこともある
- 飲みにくい:錠剤が大きい、粉が苦手、口の中に残る
- 納得していない:なぜ飲むのか分からない、毒だと思っている
- 薬が多すぎる:朝だけで10錠、といった状態
理由によって手が変わります。忘れているなら一包化やお薬カレンダー、飲みにくいなら剤形の変更を主治医に相談、多すぎるなら整理できないか薬剤師と検討する。説得ではなく、飲める形に変えるほうが早いことがほとんどです。
残薬や飲み忘れへの支援は「服薬管理は訪問看護に頼める?残薬・飲み忘れの4つの支援【船橋市】」に詳しく書きました。
受診を嫌がるとき
「病院に行こう」と言うほど拒まれる、というのはよくあることです。認知症の場合、行き先が分からないことへの不安や、自分が病気だと言われることへの抵抗が背景にあります。
訪問看護ができるのは、家での様子を主治医に伝えることです。血圧、食事量、睡眠、体重の変化。受診できていない期間も、情報が主治医に届いていれば判断の材料になります。
受診拒否そのものへの対応は「受診拒否の高齢者はどこに相談?家族だけで始める5つの手順【船橋】」に手順をまとめています。
訪問看護が「見ている」のは、ご本人だけではありません
訪問すると、ご家族の様子も目に入ります。眠れていないのではないか、痩せてきていないか、話し方に余裕がなくなっていないか。

制度上、ご家族の分の処置や健康相談はお受けできません。それでも、介護しているご家族が限界に近づいているサインは、私たちが気づける位置にあります。気になるときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターにつなぎます。
介護する側が倒れると、在宅は続きません。ご本人のためにも、ご家族に休んでいただく必要があります。
一人暮らしを続けられるかの判断
認知症の方が一人で暮らしている場合、どこまで続けられるかは大きな問題です。火の始末、服薬、金銭の管理、外出して戻れるか。判断の目安については「認知症の一人暮らしはいつまで可能?在宅継続の条件と限界サイン」にまとめました。
離れて暮らすご家族の見守りについては「一人暮らしの親が心配な方へ|訪問介護・看護でできる見守り支援」もご覧ください。
まとめ
- 認知症の診断だけでは医療保険の訪問看護にはならない。原則は介護保険
- 服薬は「飲ませる」より「飲める形にする」。理由を分けると手が変わる
- 受診できない期間も、家での様子を主治医に伝えることに意味がある
- 訪問看護は、介護しているご家族の様子も見ている
認知症の在宅生活は、正解が一つに決まりません。うまくいっていないことを、うまくいっていないままお話しいただければ、そこから一緒に考えます。
あおい訪問看護ステーション(千葉県船橋市丸山3-1-2-202)
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