精神疾患のある利用者を担当していると、「精神科の訪問看護を頼みたいけれど、誰に何を依頼すればいいのか分からない」「指示書はどの医師に書いてもらうのか」と迷う場面に出会うことがあります。
精神科訪問看護は、通常の訪問看護とは指示書の交付元や算定のしくみが異なります。この記事では、①精神科訪問看護指示書の交付要件、②認知症が主傷病の場合の取扱い、③自立支援医療(精神通院医療。精神科の通院・訪問看護にかかる費用の自己負担を軽減する制度)に関する窓口情報を、ケアマネジャーの実務目線でまとめます。
※2026年9月時点の情報です(2026年6月1日施行の令和8年度診療報酬改定を反映)。診療報酬・自立支援医療の運用は改定・変更されるため、最新の取扱いは厚生労働省・各市の担当課の公式情報をご確認ください。
精神科訪問看護指示書の交付要件
精神科訪問看護は、精神科を標榜する保険医療機関において、精神科を担当する医師から交付を受けた精神科訪問看護指示書に基づいて開始します。ここが、一般の訪問看護指示書(かかりつけ医であれば診療科を問わず交付できる)との大きな違いです。
依頼を検討する際にケアマネジャーが押さえておきたいポイントは次の通りです。
- 指示書を出せるのは「精神科を標榜する医療機関」の「精神科を担当する医師」に限られる
- かかりつけ医が精神科を標榜していない場合は、精神科医療機関への受診・紹介が必要になる
- 訪問看護を行うステーション側にも基準があり、精神科訪問看護基本療養費を算定できるのは、基準に適合し地方厚生(支)局長に届け出た指定訪問看護ステーションに限られる
また、実際に訪問看護を行うスタッフにも、精神疾患を有する者への看護について相当の経験(精神科病棟・外来での1年以上の勤務経験、精神疾患のある方への訪問看護の経験1年以上、精神保健福祉センター・保健所等での精神保健業務の経験1年以上、または国・都道府県・医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する研修の修了のいずれか)が求められます。依頼先の訪問看護ステーションが精神科訪問看護に対応しているかどうかは、事前に確認しておくとスムーズです。
認知症が主傷病の場合の取扱いに注意
ケアマネジャーの実務でとくに誤解しやすいのが、認知症が主傷病である利用者への対応です。
精神科訪問看護基本療養費が算定される訪問看護は、要介護認定を受けている利用者でも医療保険が優先される例外に該当しますが、「認知症が主傷病であって精神科訪問看護指示書が交付された患者」はこの例外から除外されます。つまり、主傷病が認知症のみの利用者は、精神科訪問看護指示書が交付されていても、要介護者等であれば原則どおり介護保険の訪問看護が優先され、医療保険には切り替わりません。
| ケース | 適用される保険 |
|---|---|
| 精神疾患(認知症以外)が主傷病で、精神科訪問看護指示書あり・要介護認定あり | 医療保険 |
| 認知症が主傷病で、精神科訪問看護指示書あり・要介護認定あり | 介護保険(原則どおり) |
| 要介護認定なし | 医療保険 |
主傷病が何であるかは診療情報提供書や指示書の記載で確認できます。「精神科の指示書が出ているから医療保険だろう」と早合点せず、主傷病が認知症かどうかを確認しておくと、給付管理・請求上のトラブルを防ぎやすくなります。医療保険と介護保険の切り分けの全体像は「医療保険の訪問看護とケアプラン」の記事も参考にしてください。
依頼から訪問開始までの流れ(一般的な進め方)
精神科訪問看護を依頼する際の一般的な流れは、次のようなイメージです。
- 利用者・家族の状態から精神科訪問看護の必要性を検討(不安・不眠・服薬管理・対人関係の困難など)
- かかりつけ医が精神科を標榜していない場合、精神科医療機関の受診・紹介を調整
- 精神科の主治医に精神科訪問看護指示書の交付を依頼
- 精神科訪問看護に対応する訪問看護ステーションへ依頼・情報共有(サービス担当者会議等での共有が望ましい)
- 訪問看護開始後も、主治医・ステーション・ケアマネジャーで状態変化の情報を共有
主治医との連携が助けになるため、依頼前に「どの医師が指示書を書けるか」を確認しておくと手続きがスムーズです。
自立支援医療(精神通院医療)の窓口
精神科への通院・訪問看護にかかる医療費については、自立支援医療(精神通院医療)を利用することで自己負担が軽減される制度があります。窓口は次の通りです(船橋市・市川市の例)。
| 市 | 担当課 | 電話番号 |
|---|---|---|
| 船橋市 | 障害福祉課 精神医療係 | 047-436-2729 |
| 市川市 | 障がい者支援課(福祉グループ) | 047-712-8513 |
なお、利用者がすでに自立支援医療の指定を受けている場合でも、訪問看護ステーションを指定医療機関として追加する手続きの詳細(様式・必要書類等)は自治体ごとに運用が異なる可能性があるため、本記事では窓口のご案内までとし、具体的な手続きは各市の担当課、または訪問看護ステーションに直接お問い合わせいただくことをおすすめします。
2026年6月改定での精神科訪問看護の変更点と、ケアマネ実務への影響
2026年6月1日施行の令和8年度診療報酬改定では、訪問看護全体で「適正な実施」が明文化されました。精神科訪問看護に関わる主な点は次のとおりです。
- 訪問時間は1回30分〜1時間30分程度が標準と明記され、標準を下回る短時間の訪問を同じ日に繰り返す形は、訪問看護を実施したとは認められません。同一建物の複数の利用者を訪問する場合は、20分を下回る訪問は算定できません
- 利用者の状態を踏まえずに一律に日数・回数・時間・人数を定める「漫然かつ画一的」な訪問は認められず、看護目標と訪問看護計画に沿って行うことが求められます。記録には実際の訪問開始・終了時刻を残します
- 複数名精神科訪問看護加算は、同一建物内で同じ日に算定する人数に応じた区分に細分化されました
- 精神障害のある方のうち重点的な支援を要する方の受け入れなどを要件とする「機能強化型訪問看護管理療養費4」が新設されました
また、厚生労働省の検討会(2026年7月6日)では、自立支援医療(精神通院医療)における訪問看護の公費負担額が2013年と比べて約10倍に増えていることを踏まえ、精神科訪問看護を含む外来医療のレセプト分析を行う方針が示されています。ケアマネジャーとしては、訪問頻度や複数名訪問が必要な理由を、訪問看護計画書とサービス担当者会議の記録で説明できるようにしておくことが、今後いっそう重要になります。
よくある質問
Q. かかりつけ医が精神科ではない場合、精神科訪問看護は利用できませんか?
A. 精神科訪問看護指示書は精神科を担当する医師からの交付が必要なため、かかりつけ医が精神科を標榜していない場合は、精神科医療機関への受診・紹介が必要になります。地域の精神科医療機関の情報は、訪問看護ステーションや地域包括支援センターにご相談ください。
Q. 認知症の利用者に精神科の症状(不安・興奮等)も見られる場合、どちらの扱いになりますか?
A. 主傷病が何かによって判断が変わります。認知症以外の精神疾患が主傷病として診断され、精神科訪問看護指示書が交付される場合は医療保険の例外に該当しますが、主傷病が認知症の場合は介護保険が優先されます。判断に迷う場合は主治医・訪問看護ステーションにご確認ください。
Q. 自立支援医療の手続きは誰が行うのですか?
A. 基本的には利用者・家族が市の担当課で手続きを行いますが、ケアマネジャーや訪問看護ステーションが情報提供・同行支援を行うこともあります。手続きの詳細は各市の担当課にご確認ください。
まとめ
- 精神科訪問看護指示書は、精神科を標榜する医療機関の精神科医師からの交付が必要
- 主傷病が認知症の場合は医療保険の例外規定から除外され、原則として介護保険が優先される
- 依頼の際は、主治医との連携・訪問看護ステーションの対応状況の確認がポイントになる
- 自立支援医療(精神通院医療)の窓口は船橋市・市川市それぞれの障害福祉担当課
- 2026年6月の改定で、訪問時間の標準と「漫然かつ画一的な訪問の禁止」が明文化。訪問頻度・複数名の根拠は計画書と記録で示す
あおい訪問看護ステーションも精神科訪問看護に対応しています(体制の詳細はお気軽にお問い合わせください)。指示書の交付状況や主傷病の判断で迷ったときの相談先のひとつとして、気軽に使ってください。
ケアマネジャー様・連携室様:空き状況・受け入れ可否はお電話1本でご回答します。あおい訪問看護ステーション 050-5536-3136
対応エリア:船橋市・市川市・鎌ケ谷市・白井市を中心

