利用者が末期がんや進行性の神経疾患などで週4日以上の訪問看護を検討するとき、「この訪問看護は介護保険の限度額に入るのか」「ケアプランにはどう書けばいいのか」と迷う場面、ありませんか。
医療保険の訪問看護と介護保険の訪問看護は、名前は似ていますが、根拠法や請求のしくみは別の制度です。この記事では、①介護保険優先原則と医療保険が適用される3つの例外、②区分支給限度基準額(介護保険で1か月に使える上限枠)・給付管理票(介護保険の利用実績をまとめる書類)との関係、③ケアプラン(居宅サービス計画書)への記載の実務、をまとめました。
※本記事は2026年8月時点の制度情報をもとにしています。診療報酬・介護報酬は改定されるため、最新の取扱いは厚生労働省・各保険者の公式情報をご確認ください。
介護保険優先原則と、医療保険になる3つの例外
要介護・要支援認定を受けている利用者の訪問看護は、原則として介護保険から給付されます(介護保険優先原則)。ただし、次の3パターンに該当する場合は例外として医療保険(訪問看護療養費)から給付されます。
| 例外 | 内容 |
|---|---|
| ① 特別訪問看護指示書 | 主治医が、急性増悪等により一時的に頻回の訪問看護が必要と判断した場合に交付。恒常的・機械的な交付は望ましくないとされています |
| ② 厚生労働大臣が定める疾病等(別表7) | 末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、人工呼吸器を使用している状態など、告示で定められた疾病等に該当する場合 |
| ③ 精神科訪問看護基本療養費が算定される訪問看護 | 精神科を担当する医師の指示による訪問看護。ただし主傷病が認知症の場合はこの例外から除かれ、原則どおり介護保険が優先されます |
つまり、要介護認定を受けている利用者でも、上記①〜③に当てはまれば訪問看護は医療保険から給付されるということです。逆に、これらに当てはまらない限り、要介護認定がある方の訪問看護は介護保険から給付されます。
別表7の疾病名は診療報酬改定で追加・変更される可能性があるため、対象疾病の詳細は主治医または訪問看護ステーションにご確認ください。精神科訪問看護の依頼手続きの詳細は「精神科訪問看護の依頼方法」の記事、特別訪問看護指示書の使いどころは「特別訪問看護指示書とは」の記事で詳しく解説しています。
区分支給限度基準額・給付管理票との関係
ケアマネジャーの実務で最も気になるのは、「この訪問看護は限度額を圧迫するのか」という点だと思います。結論として、医療保険から給付される訪問看護(上記①〜③のケース)は、介護保険の区分支給限度基準額の対象に含まれません。
これは、区分支給限度基準額が介護保険の居宅サービス費(介護給付)についての上限枠であるのに対し、医療保険から給付される訪問看護療養費はそもそも別会計・別制度の給付だからです。したがって、次のような整理になります。
- 医療保険から給付される訪問看護 → 区分支給限度基準額の対象外/給付管理票(介護給付費請求)にも計上されない
- 介護保険から給付される訪問看護(原則のケース) → 区分支給限度基準額の対象。他の居宅サービスと合わせて限度額管理が必要
「限度額がいっぱいで訪問看護を入れられない」という相談を受けたとき、別表7該当や特別訪問看護指示書の交付によって医療保険に切り替われば、限度額の枠を空けたまま頻回の訪問看護を組み合わせられる、という点は覚えておくと調整の幅が広がります。
ケアプラン(居宅サービス計画書)への記載の実務
医療保険の訪問看護は介護保険の給付ではないため、給付管理票には計上されません。一方で、利用者の生活全体を把握する目的で、居宅サービス計画書の第2表(サービス内容)・第3表(週間サービス計画表)に、医療保険サービスの利用状況を記載するのが一般的な実務です。
ここで注意したいのは、次の2点を分けて考えることです。
- 制度上確定している点:医療保険の訪問看護は介護保険の給付管理の対象外である
- 運用面の実務:第2表・第3表への記載の仕方は、事業所や使用する介護ソフトによって多少の運用差がある
「この書き方が正解」という一律のルールがあるわけではないため、記載方法に迷ったときは、担当地域の保険者(市の介護保険課)や所属事業所の運用ルールに確認しながら進めると安心です。訪問看護ステーション側とも、指示書の期間・頻度の情報を共有しておくと、ケアプランの整合性を保ちやすくなります。
サービス担当者会議・情報連携で確認しておきたいこと
医療保険の訪問看護が入るケースは、頻回訪問や医療的ケアの比重が高いことが多く、ケアマネジャー・訪問看護ステーション・主治医の間での情報共有がとくに助けになります。サービス担当者会議の場では、次のような点を確認しておくと連携がスムーズです。
- 現在の訪問看護がどの根拠(別表7/精神科/特別指示書)で医療保険になっているか
- 指示書・特別指示書の有効期間と、期間終了後の見通し(介護保険に戻るのか、継続するのか)
- 頻回訪問中の他サービス(訪問介護・福祉用具等)との時間調整
サービス担当者会議に訪問看護をどのタイミングで呼ぶとよいかについては、「サービス担当者会議に訪問看護を呼ぶタイミング」の記事も参考にしてください。
よくある質問
Q. 別表7に該当するかどうかは、誰が判断するのですか?
A. 医学的な判断は主治医が行います。ケアマネジャーは、利用者の病名や状態から「該当する可能性がある」と気づいたら、訪問看護ステーションや主治医に相談し、必要な指示書の交付につなげる役割を担います。
Q. 医療保険に切り替わっている間、ケアプランの区分支給限度基準額の使用状況はどう変わりますか?
A. その訪問看護分は限度額の計算から外れます。ただし、他の介護保険サービス(訪問介護・福祉用具貸与等)は通常どおり限度額の対象ですので、全体のケアプランは変わらず管理が必要です。
Q. 精神科訪問看護指示書が出ていても、認知症の診断がある方は医療保険になりませんか?
A. 主傷病が認知症の場合は、精神科訪問看護基本療養費の例外規定から除外されるため、原則どおり介護保険が優先されます。この整理を誤解すると請求上のトラブルにつながりやすいため、判断が難しい場合は訪問看護ステーションにご確認ください。
まとめ
- 要介護認定があっても、①特別訪問看護指示書、②別表7の疾病等、③精神科訪問看護(認知症を除く)のいずれかに該当すれば訪問看護は医療保険から給付される
- 医療保険から給付される訪問看護は、介護保険の区分支給限度基準額・給付管理票の対象外
- ケアプランの第2表・第3表への記載は実務上行われるのが一般的だが、事業所・保険者の運用に沿って確認する
- 判断に迷うケースは、訪問看護ステーション・主治医・保険者へ早めに相談するのが安全
あおい訪問看護ステーションも、医療保険・介護保険どちらのケースでも、指示書の交付状況や頻回訪問の組み方について、困ったときに気軽に相談できる窓口のひとつとして使っていただければと思います。
ケアマネジャー様・連携室様:空き状況・受け入れ可否はお電話1本でご回答します。あおい訪問看護ステーション 050-5536-3136
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