訪問看護への不満や疑問を伝えること自体は、カスタマーハラスメント(カスハラ)ではありません。2026年9月21日時点で10月1日施行予定の厚生労働省指針は、社会通念上許容される範囲の苦情を「正当な申入れ」としています。一方、脅しや人格を傷つける言動は、相談の内容とは別に問題になります。この記事では、家族が困りごとを整理して伝える方法と、事業所で解決しないときの相談先を紹介します。
※文中の会話は、相談の伝え方を示す架空の説明例です。実際の利用者・家族の事例ではありません。
訪問看護への苦情はカスハラになる?
正当な申入れはカスハラではありません
サービスへの疑問は、遠慮せず相談できます。厚生労働省のカスタマーハラスメント防止指針は、苦情のすべてがカスハラに当たるわけではないと明記しています。厚生労働省の解説ページも、社会通念上許容される範囲の申入れは対象外と説明しています。
たとえば「予定より訪問が遅れた理由を知りたい」「説明をもう一度聞きたい」という相談です。ご本人の状態や訪問の内容を確認することも、利用者・家族にとって必要な行動です。
訪問看護は、主治医の指示や訪問看護計画に基づいて行います。厚生労働省の訪問看護計画書等の記載要領にも、指示書を踏まえた目標の設定が示されています。希望する内容と実際の提供内容が違うと感じたら、何が違うのかを確認しましょう。サービスの範囲は、訪問看護に頼めないことを整理した記事も参考になります。
内容と伝え方の両方で判断されます
同じ不満でも、伝え方によって相手への影響は変わります。厚生労働省の指針は、要求の内容だけでなく、言動の方法や経緯などを総合して判断するとしています。家族が困っていた背景も、事業所の対応も確認する必要があります。
| 相談として伝えられる例 | 避けたい言動の例 |
|---|---|
| 「今日の処置の説明を確認したいです」 | 職員の人格を否定する言葉を繰り返す |
| 「訪問時間が変わるときは連絡がほしいです」 | 大声で威圧し、長時間その場に留める |
| 「記録と請求内容の違いを確認したいです」 | SNSへの投稿を示して脅す |
右欄は厚生労働省の指針が挙げる言動を、訪問看護の場面に置き換えた例です。表だけで個別の行為を法的に判定するものではありません。相談の目的を明確にし、相手の安全も尊重することが、話し合いの出発点です。
訪問看護の不満を伝える前に整理したいこと
「起きたこと」と「気持ち」を分けて書く
伝える前に、出来事を短くメモしておくと話が進みやすくなります。家族の気持ちを抑え込むためではありません。事業所が確認すべき点を特定するためです。日付、訪問した人、説明された内容、後から気づいた疑問を分けて書きます。
たとえば「急いで帰ったように感じた」という気持ちと、「薬の説明を聞き終える前に訪問が終わった」という出来事を分けます。後者を伝えると、説明の続きが必要かを相談できます。事業所の記録と家族の認識が違う場合も、確認する場所が見えます。
メモのチェックリスト
- いつ、どの訪問で起きたか
- 何を説明され、何が分からなかったか
- 本人の生活や家族の予定にどんな影響があったか
- 今、何を確認してほしいか
希望する対応を一つに絞る
初回の連絡では、最も困っていることを一つ伝えると、返答を受け取りやすくなります。「謝ってほしい」「担当を変えてほしい」「訪問計画を見直したい」など、希望はそれぞれ違います。希望がまだ決まっていなければ、「まず事実を確認したい」で構いません。
会話例は「昨日の訪問で、次回の処置の説明が聞き取れませんでした。本人も心配しています。もう一度説明をお願いできますか」です。相手を責める言葉より、必要な対応が具体的に伝わります。
事業所へ苦情を伝える3手順
まず相談窓口と連絡方法を確認する
訪問中に話しにくい場合は、事業所の相談窓口に連絡します。担当看護師本人に直接伝える必要はありません。契約時に渡された重要事項説明書(サービス内容や相談窓口を記した書類)を確認しましょう。見つからなければ、事業所へ「苦情や相談の担当者を教えてください」と尋ねてください。
厚生労働省の指定訪問看護の運営基準に関する通知は、事業所が相談窓口や苦情処理の体制を利用者に示すことを説明しています。
事実・影響・希望の順で伝える
連絡では、先に結論を置き、その後に出来事と希望を伝えます。複数の問題を一度に話すと、事実確認と回答が曖昧になるためです。
| 手順 | 伝えること | 言い方の例 |
|---|---|---|
| 1. 事実 | 日時、訪問内容、確認したい点 | 「月曜日の訪問で、予定していた説明がありませんでした」 |
| 2. 影響 | 本人や家族が困っていること | 「次の訪問までの過ごし方が分からず困っています」 |
| 3. 希望 | まず求める対応 | 「説明内容を確認し、折り返し連絡をお願いします」 |
緊急の体調変化があるときは、苦情相談の返答を待たず、主治医や契約上の緊急連絡先へ相談してください。
返答と次の確認日を記録する
相談後は、事業所から聞いた説明と、次に誰が何を確認するかをメモします。電話で聞き取れなかったときは、もう一度確認して構いません。口頭のやり取りだけでは、家族と事業所で認識がずれることがあります。
「本日の説明では、次回の訪問前に管理者から連絡をいただく、という理解で合っていますか」と確かめます。解決しなかった場合も、次の相談先に状況を伝えやすくなります。記録の目的は相手を追及することではなく、本人に必要な支援を途切れさせないことです。
訪問看護の相談先をどう選ぶ?
介護保険の利用ならケアマネジャーにも相談する
介護保険で訪問看護を使っている場合は、担当ケアマネジャーに相談できます。千葉県国保連合会も、まず事業所かケアマネジャーに相談する流れを案内しています。「看護師に言いにくいので、事業所への伝え方を一緒に考えてほしい」という相談でも構いません。医療保険で利用している場合など、担当ケアマネジャーがいないケースでは、事業所の相談窓口から始めます。
外部の相談窓口を使うとき
事業所と話しても改善が見られない、対応に納得できない場合は、外部窓口へ相談できます。千葉県国保連合会の苦情処理の案内は、市町村の介護保険担当窓口、地域包括支援センター、国保連合会を紹介しています。
- 事業所の相談窓口:契約時の重要事項説明書で確認
- 担当ケアマネジャー:他の介護サービスとの調整が必要なとき
- 船橋市介護保険課:介護保険サービスの相談先の確認
- 船橋市地域包括支援センター:高齢者の介護や福祉も相談
- 千葉県国保連合会の苦情相談窓口:介護保険上の指定サービスの相談
医療保険での訪問看護や、お住まいの自治体が異なる場合は、窓口が変わることがあります。国保連合会が扱う苦情にも範囲があり、損害賠償の仲介や謝罪要求などは対象外です。相談前に対象となる苦情を確認してください。
相談のあとも訪問看護を続けるために
担当変更や訪問方法の調整は話し合う
一度のすれ違いだけで、利用を続けられないと決める必要はありません。何が困りごとの原因かを確認し、事業所と調整できる点を話し合います。説明する時間、連絡の方法、担当者など、相談の内容によって選択肢は変わります。希望どおりになるとは限りませんが、まず理由と希望を伝え、可能な方法を確認しましょう。事業所の変更を考えるときは、訪問看護ステーションを変更する手順も参考になります。介護保険サービスなら、厚生労働省の介護サービス情報公表制度で事業所情報を調べられます。
症状・治療に関する疑問は主治医へつなぐ
薬や処置について判断が必要な疑問は、主治医・かかりつけ医に相談してください。訪問看護師への苦情と、治療方針への疑問は、確認する相手が異なる場合があります。自己判断で薬や処置を変えず、確認したい点を主治医と事業所に伝えましょう。
よくある質問
Q1. 「説明が分かりにくい」と伝えるとカスハラですか?
いいえ。その相談だけでカスハラにはなりません。分からなかった箇所と、もう一度聞きたい内容を伝えてください。正当な申入れはカスハラに当たらないと厚生労働省は示しています。
Q2. 担当看護師に直接言いにくいときは?
事業所の相談窓口や管理者に連絡してください。介護保険の利用なら、担当ケアマネジャーにも相談できます。窓口は重要事項説明書で確認できます。
Q3. 事業所の回答に納得できないときは?
回答内容と、確認したい点を記録しましょう。介護保険サービスなら、市町村の介護保険担当窓口や国保連合会にも相談できます。対象範囲は窓口に確認してください。
Q4. 苦情を言うと訪問を断られますか?
正当な苦情だけを理由に、直ちに訪問を断れるというものではありません。ただし、サービス継続の判断は個別の事情によります。厚生労働省の介護現場におけるハラスメント対策も、提供の可否を一律に決めず、必要なサービスに支障が出ないよう求めています。
参考リンク(公式ページ)
上記は2026年9月21日に各ページを確認しました。相談窓口と制度は公開前に再確認してください。
訪問看護の内容や連絡方法について相談したい方は、あおい訪問看護ステーションのお問い合わせ窓口をご利用ください。

