訪問看護で困った言動があったら?初動4ステップと相談先、入職前に聞く5つ

訪問看護で働く人へ。困った言動があったらどうする。初動4手順。あおい訪問看護ステーション(船橋市)

訪問看護は、利用者さんのお宅に一人で伺うことの多い仕事です。暴言や威圧的な態度、体に触れられるといった「困った言動」に出会ったらどうするのか。訪問看護への転職を考える方から、よく聞かれる不安のひとつです。

先に結論をお伝えします。その場で我慢を続ける必要はありません。危ないと感じたら離れて安全を確保し、事業所へ連絡し、あったことを記録して、次の訪問の方法は事業所と一緒に決めます。カスハラかどうかを、その場で一人で判断しなくて大丈夫です。2026年10月からは、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が、すべての事業主の義務になりました。

この記事で分かること:

  • 介護・訪問看護の現場で、困った言動がどのくらい起きているか(国の調査の数字)
  • 2026年10月からの義務化と、いま国で議論されている運営基準の見直し
  • その場の初動4ステップと、職場の中・外の相談先
  • 見学や面接で、職場の備えを確かめる5つの質問

※2026年11月7日時点の情報です。

目次

訪問看護の困った言動はどのくらいある?|国の調査の数字

2026年11月6日の社会保障審議会介護給付費分科会に、厚生労働省が介護現場のカスハラに関する調査の速報値を出しました。936の施設・事業所が回答した調査です。

訪問看護の職員でカスハラを受けた経験がある51.2%、過去1年に受けた34.0%、初動の手順を定めている施設・事業所39.0%
介護・訪問看護のカスハラの現状(厚生労働省 介護給付費分科会 第274回 資料5・2026年11月6日の速報値)

訪問看護の職員では、カスハラを受けた経験がある人が51.2%、過去1年に限ると34.0%でした。一方で、カスハラが起きたときの初動の手順を定めている施設・事業所は、介護サービス全体で39.0%にとどまります。管理者などが事実を確かめて対応方針を考える体制がある施設・事業所は72.1%ですが、契約の解除などを判断する手順まで定めているのは15.4%でした。

この数字は、管理者などが職員から聞き取った結果をまとめたものです。訪問看護では1事業所あたり平均4.2人に聞き取っています。速報値なので、最終的な報告で変わることがあります。資料は厚生労働省の第274回 介護給付費分科会の資料ページにあります。

訪問看護の団体の調査でも、6割を超える事業所で報告

訪問看護の業界団体も調べています。全国訪問看護事業協会と日本訪問看護財団が2025年4月に行った合同調査では、回答した2,628事業所の64.2%が「職員からカスハラを受けたと報告されたことがある」と答えました。

報告があった言動(複数回答)割合
威圧的な言動85.3%
精神的な攻撃66.9%
性的な言動59.0%
執拗な(継続的な)言動35.1%
身体的な攻撃26.8%

※「報告があった」1,687事業所に占める割合です。回収率は21.4%で、管理者が回答しています。出典は訪問看護におけるカスタマーハラスメントの状況調査結果(PDF)です。

同じ調査で、ハラスメントを受けやすいリスクとして最も多く挙がったのは「訪問という1対1または1対多の環境」(88.7%)でした。一人で伺う働き方そのものが、備えを必要とする理由になっています。

2026年10月から、カスハラ対策は事業主の義務に

改正された労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、すべての事業主にカスハラを防ぐための措置が義務づけられました。厚生労働省の解説「従業員を守るために ― カスタマーハラスメント対策の新ルール」では、カスハラを次の3つをすべて満たすものとしています。

  • 顧客や施設の利用者など、事業に関係する人の言動であること
  • 業務の性質などに照らして、社会通念上許される範囲を超えていること
  • 働く人の就業環境が害されること

事業主に求められるのは、方針をはっきりさせて職員に知らせること、相談窓口を決めること、起きたあとに迅速・適切に対応することなどです。職員に任せきりにせず、組織として対応する仕組みが求められています。条文はe-Gov法令検索の労働施策総合推進法で確認できます。義務の内容は厚生労働省のカスタマーハラスメント対策の義務化の資料(PDF)にまとまっています。

介護・訪問看護の運営基準も見直しが議論されている

介護サービスの運営基準では、これまでセクハラとパワハラの対策は「事業者が講ずべき措置」でした。一方、カスハラへの対応は「講じることが望ましい取組」の位置づけでした。

2026年11月6日の分科会に、厚生労働省はハラスメント対策の改定の方向性を示しています。主な対応案は次のとおりです。

  • すべての介護事業者に、カスハラへの対応も「事業者が講ずべき措置」として運営基準に位置づける
  • 職員に危険が及ぶおそれがあるときの安全確保について、事業所が気をつける点を解釈通知などで明確にする
  • サービスの提供を断れる「正当な理由」の考え方を明確にし、続けるのが難しくなったときは段階的に対応を考える
  • 認知症などの病気や障害が背景にある言動は、その背景をふまえて対応する。それでも危険があるときは安全確保を優先する

どれも「〜としてはどうか」という案の段階で、まだ決まってはいません(2026年11月7日時点)。訪問看護の複数名訪問の加算については、利用者負担が増えるため、引き続き利用者や家族の同意を算定の条件にする案が示されています。議論の経過は、8月の第263回 介護給付費分科会の議事録でも読めます。

その場でどうする?|困った言動に出会ったときの4ステップ

訪問中に困った言動に出会ったときは、次の順番で動きます。厚生労働省の介護現場におけるハラスメント対策のページにあるマニュアルや研修資料の考え方に沿った、一般的な流れです。

困った言動に出会ったときの4ステップ。1離れる、2連絡する、3記録する、4次の訪問方法を事業所と一緒に決める。差し迫った危険があるときは110番
ステップすること
1 離れる危ないと感じたら、説得を続けずにその場を出ます。差し迫った危険があるときは110番です。
2 連絡する安全な場所から事業所へ。「いつ・どこで・何があり・いまどこにいるか」を先に伝えます。
3 記録する日時、場所、言われたことやされたこと、自分の体と気持ちの状態を残します。
4 一緒に決める次の訪問を一人で続けるかどうかを、自分だけで決めません。担当の変更や二人での訪問は、管理者と相談して事業所が決めます。

厚生労働省の介護現場におけるハラスメント対策マニュアル(PDF)は、訪問先からすぐ外に出られる経路を確かめて、職員の間で共有しておくことを挙げています。報告に使える相談シート(PDF)も公開されています。訪問看護で起きる暴力やハラスメントへの対策は、厚生労働省の医療現場及び訪問看護における暴力・ハラスメント対策のページにもまとまっています。

病気の症状による言動も、一人で抱えない

認知症や精神疾患などの症状が背景にある言動は、すぐに「カスハラ」として扱うものではありません。ケアや環境の調整、主治医との相談で落ち着くこともあります。ただ、症状が理由でも、危ないときは安全を優先します。判断に迷うときこそ、事業所のチームで考えることが大切です。

職員向けのくわしい手順は訪問看護のカスハラ対応|一人訪問の4手順に、ケアマネジャーや主治医との連携はケアを続ける連携4段階にまとめています。

相談先は「職場の中」と「職場の外」の2本

まず相談するのは、職場の中の管理者や相談窓口です。ただ、管理者に言いにくいときや、職場の対応に納得できないときのために、外の窓口も知っておくと安心です。

相談先は職場の中(管理者・上司、事業所の相談窓口、同行の先輩・チーム)と職場の外(千葉県カスハラ相談センター、総合労働相談コーナー、こころの耳)の2本
相談先内容
千葉県在宅医療・訪問介護職員カスハラ相談センター県内の訪問看護ステーションの職員が対象。職員本人だけでなく管理者も相談できます。電話0120-833-613、月〜金曜の9時〜19時(祝日と年末年始を除く)。
総合労働相談コーナー職場のトラブル全般を相談できる、労働局と労働基準監督署の窓口です。
こころの耳働く人のメンタルヘルスの情報と相談窓口をまとめた、厚生労働省のサイトです。

千葉県の窓口のくわしい内容は千葉県在宅医療・訪問介護職員カスハラ相談センターのページで確かめてください。差し迫った危険への通報の代わりになる窓口ではありません。

総合労働相談コーナーの場所は千葉労働局の総合労働相談コーナーのページに載っています。つらさが続くときは、こころの耳の相談窓口も使えます。看護職の働く環境については、日本看護協会の看護職の労働安全衛生のページも参考になります。

入職前に確かめたい|見学・面接で聞いておきたい5つのこと

求人票には、カスハラへの備えまで書かれていないことが多いものです。見学や面接では「方針があるか」だけでなく、「そのとき誰がどう動くか」を聞いてみてください。

見学・面接で聞いておきたい5つのこと。訪問を切り上げてよいか、訪問中の連絡先、二人訪問や担当変更の決め方、管理者以外の相談窓口、大変だったケースでの職場の支え方
  1. 危ないと感じたら、訪問を切り上げてよいか。その判断は誰がするか
  2. 訪問中に困ったとき、誰に・どの手段で連絡するか
  3. 二人での訪問や担当の変更を、誰がどう決めているか
  4. 管理者以外にも相談できる窓口があるか
  5. 「いちばん大変だったケースで、職場はどう支えたか」

5つ目は、答えにくい質問かもしれません。それでも、具体的な出来事と職場の動きを話してもらえるかどうかで、その職場の備えが見えてきます。事業所として決めておくべきことは訪問先での安全とカスタマーハラスメント|事業所として決めておくべきことでも整理しています。

あおい訪問看護で働く場合

あおい訪問看護ステーション(千葉県船橋市)では、入職後は先輩との同行訪問から始めます。独り立ちの時期は、本人のペースを見ながら相談して決めます。訪問の記録は、貸与のスマホ・タブレットから入力します。

訪問中に困ったことがあったときの連絡の流れや相談の窓口は、面談で具体的にご説明します。上の5つの質問も、遠慮なく聞いてください。入職前に現場を体験できるインターンシップ制度もあります。勤務時間や給与などの条件は看護師募集ページをご覧ください。

よくある質問

Q1. 「これくらいで報告していいのかな」と迷うときは?

迷ったら報告してください。カスハラかどうかを決めるのは、職員一人ではなく事業所です。「不快だった」「怖かった」という感覚も、大事な情報になります。

Q2. 訪問を途中でやめたら、利用者さんに迷惑がかかりませんか?

危ないときは、職員の安全が先です。国の審議会の資料でも、危険が及ぶおそれがあるときは、その場から退避して訪問を一時中止するなど、安全確保を優先する対応が必要だとしています。中断したあとのケアの調整は、事業所が主治医やケアマネジャーと相談して進めます。

Q3. 認知症の方の言動もカスハラになりますか?

病気の症状が背景にある言動は、すぐにカスハラとは扱わず、背景をふまえたケアを考えます。ただし危ないときは安全を優先し、判断に迷うときはチームで検討します。

Q4. 千葉県の相談窓口は、訪問看護の職員も使えますか?

使えます。千葉県在宅医療・訪問介護職員カスハラ相談センターの相談対象に、訪問看護ステーションの職員が入っています。管理者からの相談も受け付けています。

Q5. 求人を見るとき、どこを見ればいいですか?

求人票に書かれていなくても、見学や面接で聞けば分かります。上の5つの質問を使ってみてください。紹介会社を通す前に確かめておきたい条件は紹介会社を通す前に確認したい条件にまとめています。

参考リンク(公式ページ)

※2026年11月7日時点の情報です。制度の内容は変わることがあるため、各公式ページでご確認ください。

見学・応募のご案内

「訪問看護に興味はあるけれど、一人で伺うのが不安」という段階でも、お気軽にご相談ください。見学や、お話だけの面談も歓迎です。

電話:050-5536-3136(採用担当)
エントリーフォームから応募する

あおい訪問看護の採用情報/看護師募集ページ/お問い合わせ

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この記事を書いた人

金子誠 看護師

株式会社True Colors 代表・看護師。千葉県船橋市で「あおい訪問看護ステーション」を運営しています。

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